薬が効きづらい進化したねずみ「スーパーラット」の特徴と対策
近年、都会を中心に毒えさ(殺鼠剤)の効かない「スーパーラット」というねずみが急増しています。
その被害の大きさは、報告されているねずみ被害の大半がこの「スーパーラット」によるものである、と言われている地域すらあるほどです。
この項目では、これら脅威の「スーパーラット」の能力と誕生、そして対策方法について解説していきます。
クマネズミの進化とその理由
「スーパーラット」の大半は、クマネズミという種類のねずみが、毒への耐性を持ったものです。
クマネズミは、運動能力が高くどこからでも入ってきます。しかも用心深い性格で毒もワナも避けてしまいます。家庭で完全に駆除するのはとても難しい相手です。このため、クマネズミが変化して生まれたスーパーラットはなかなか毒えさを食べないうえに、食べても効かないという、とてもやっかいなねずみです。
都会でのねずみ被害が増加し続けているのは、
- ・出る場所が限られていて比較的駆除しやすいドブネズミが減った
- ・クマネズミの被害が8割以上を占めるほどに急増した
- ・クマネズミの多くが「スーパーラット」化した
といった点に理由があると言われています。
毒えさへの耐性を調べる比較実験では、ふつうのクマネズミが長くても2週間程度で死んでしまったのに対して、スーパーラットの場合なんと平均160日、最大で440日以上生き続けたという実験結果も出ています。
クマネズミ進化論
ただでさえ駆除しづらいクマネズミの多くがスーパーラットとなったのには、もともと毒に強い体質のねずみがいたこと、そして遺伝によるものが原因であると言われています。
本来、ねずみの持つ毒への耐性は一匹ごとにも、地域ごとにも違います(地方よりも都会のねずみのほうが強い耐性を持っている傾向にあります)。このため、同じように毒えさを食べても、死ぬものと生き残るものがいます。
これ自体は自然の摂理ではあるのですが、ねずみの場合1世代ごとの寿命が短いうえに、一生のうちに何度も、たくさんの子どもを産んでいきます。生き残った強いねずみ同士が子どもを産むと、その子どもたちもまた毒に強い耐性を持ったスーパーラットとして生まれてきます。
ふつうのねずみが毒や寿命で減っていく中、スーパーラットは出産のたびに増えていきます。更に増えたスーパーラット同士が子どもをつくることでより毒に対して強くなっていくのです。
スーパーラット対策の殺鼠剤「リン化亜鉛」
これまで市販されてきた毒えさの多くには、「ワルファリン」「クマリン」といった、ねずみを内出血させて殺す薬が使われていました。
しかしスーパーラットを駆除するには、これらの広く使われてきた毒えさでは効果がありません。そこで駆除業者を中心に使われるようになったのが、「リン化亜鉛」と呼ばれる成分の殺鼠剤です。これはねずみの胃液と反応して毒ガスをつくる薬品で、スーパーラットに対しても高い効果を発揮します。
現在ではリン化亜鉛入りの毒えさもamazonなどで簡単に手に入るので、家庭で使用することも可能です。ただし、毒性が強く、劇薬指定もされている薬剤ですから、その場合には、
- 子どもやペットのいる家では使わないほうがいい
- 効果があまり持続しない(2週間で半減、2ヶ月で10パーセント以下に)
といった点に注意してください。
スーパーラットに対して駆除業者どう対応するのか?
プロの駆除業者は、スーパーラットにどのような対処をしているのでしょうか。先に述べたような、リン化亜鉛入りの強力な毒えさを使用する業者ももちろんありますが、実は、そもそも駆除業者は薬剤にはあまり頼りません。
駆除業者の多くは毒えさの他に、粘着シートなどのワナ、外からの侵入口を閉鎖するといった方法を組み合わせて使い、駆除していきます。特に、ねずみを侵入させない施工が、駆除作業の中心と言ってもよく、その意味では、スーパーラットであろうとなかろうと侵入を防げば被害は止められますので、実のところあまり大きな問題ではないとも言えます。
もし、自力での駆除を試みていて、薬剤の効き目があまりないと感じられているなら、駆除業者に相談して、封鎖工事を検討することをおすすめします。