多額の損害や生命の危険を伴うねずみの代表的4つの被害
ねずみが家の中に出入りすることで、さまざまな被害がもたらされます。ねずみによる被害は、大きく4種類に分類できます。
- 衛生面での被害
- 経済面での被害
- 精神面での被害
- 安全面での被害
これらの被害は、放っておくと深刻な事態を招く場合もあります。ここでは、ねずみによる被害について、詳しく見ていきたいと思います。
すでに被害が発生して困っている場合は、専門の駆除業者に相談されることをおすすめします。
衛生面での被害~ねずみが媒介する危険な病原菌
14世紀のヨーロッパでは、ねずみを媒介に蔓延したペストにより当時の人口の3割が失われたと言われています。現代においても、ねずみはさまざまな病気の原因になる存在です。
ねずみのいる場所が、衛生的だと思う人はいないでしょう。事実、ねずみは下水道、ホコリだらけの倉庫、掃除の手が届かない屋根裏などに住みつき、その体は常に雑菌だらけです。通り道になったところ、触った食べ物には、当然それらの病原菌が残されていきます。また、ねずみの体についているダニなどの寄生虫が菌やウィルスを媒介することもあります。
以下は、ねずみによって運ばれる病原菌が引き起こす病気の代表的なものです。中には非常に深刻なものもあります。
病名 | 原因菌・ウィルス | 症状など |
---|---|---|
サルモネラ症(食中毒) | サルモネラ菌 | 嘔吐、腹痛、下痢などを引き起こす、いわゆる「食中毒」です。致死率の高い病気ではありませんが、子どもや高齢者では重症化するおそれもあります。 |
E型肝炎 | E型肝炎ウイルス(HEV) | ウイルス性肝炎の一種で、妊娠中の女性が感染した場合、劇症化して致死率が20%にも達します。対応するワクチンがなく、対処療法しかありません。 |
鼠咬症 | 鼠咬症スピリルムまたはストレプトバチルス | ねずみに直接、咬まれることによって感染し、起こる病気です。発症すると咬まれた傷口がただれ、高熱や震えといった症状が出ます。 |
腎症候性出血熱・ハンタウイルス肺症候群 | ハンタウイルス | ねずみの排泄物を通じて感染するハンタウイルスによる病気です。発熱、頭痛、腎不全、皮下および臓器における出血などが起こります。 |
レプトスピラ症(ワイル病) | レプトスピラ菌 | ねずみの排泄物に含まれる菌から感染します。発熱や倦怠感などの症状があります。特に重症なものはワイル病と呼ばれ、致死率は40%に達することもある危険な病気です。 |
ここに挙げた以外にも、ねずみによって菌・ウィルスが運ばれ、引き起こされる病気はさまざまにあります。
経済面での被害~飲食店にとって特に深刻
なんでもかじってしまい、あちこちにフンや尿をまきちらすというねずみの習性は、それ自体、経済的な被害をもたらします。大事な家財や家そのものが、かじられて傷ついたり、フンや尿で汚されれば、その価値は損なわれますし、廃棄して買い直す必要性も生じるからです。
前述したような、衛生面の被害、安全面の被害が、それに付随する経済的な被害を招くことも容易に想像できます。病気になれば医療費が必要ですし、火災に見舞われれば経済被害は莫大なものになるでしょう。これは、一般家庭はもちろんのこと、飲食店などではいっそう顕著になると言えます。たとえば、次のようなものです。
- ・食材をかじられてしまい、廃棄することになった
- ・ねずみがいることが知られ、客足が遠のいてしまった
- ・食中毒が発生し、行政処分を受けて営業停止になった
そのため、飲食店にとって、ねずみ対策は経済被害を抑えるために重要度が高いと言えます(※参考:飲食店のねずみ被害への正しい対処方法)。
こうした被害をなくすために、ねずみの駆除を行う必要がありますが、駆除のために必要な道具を購入したり、駆除業者に依頼したりすれば、そのためにお金がかかることになり、これもまた、ねずみによる経済被害の一種だと言えます。
精神面での被害~ねずみと遭遇・目撃するだけでもストレスになる
東京都が介護支援専門員に行った調査を通じて、自宅でねずみの被害を受けた高齢者の中に、次のような状態の人がいることがわかりました。
- ・夜に眠れないことで体力が低下し持病が悪化した
- ・夜に眠れないことで日中に寝てしまい、食事や服薬などのケア体制がうまく遂行できない
- ・不安、気持ち悪い(と感じる)
このことから、ねずみと遭遇したことで高齢者がストレスを感じ、生活に悪影響を与えている場合があると推定されます。高齢者に限らず、ねずみの姿を目撃するだけでも精神的な負担になります。直接的な被害を受けていなくても、ねずみが家に出るということ自体が精神的な被害だと言えるのです。
安全面での被害~電線をかじられて事故や漏電火災につながる
ねずみの歯は生きている限り伸び続けます。そのスピードは年間で最大10cmになるほどで、そのままにしていると歯が伸びすぎたねずみは自分の歯が邪魔になってものが食べられなくなります。これを防ぐために、ねずみは常になにかをかじって歯をすり減らそうとする習性があります(※ねずみの習性についてはこちらの記事を参考にしてください)。
このねずみの習性により、私たちは家の中のさまざまなものをかじられて被害を被ることになります。
大事な家財や家そのものがかじられることで傷つけられるのも困りますが、危険なのは、配線などをかじられてしまうことです。ねずみが電線をかじったことが原因で漏電火災が起こることがあります。下記は都内でねずみが原因で起きたと考えられる火災件数の統計です。近年は東京都内だけで、毎年10件以上、ねずみが原因の火災が起きています。
※出典:東京消防庁
ほかに、受変電設備の中にねずみが侵入し、ねずみ自身が感電してショートが起こったために建物が停電するといった事故も起こっています。ほかにも通信ケーブルがかじられて電話やインターネットの通信が断たれたり、ガス管がかじられてガス漏れが起きるといった事故も起こっています。
どこへでも入り込み、なんでもかじってしまうねずみの習性が、こうした事故の原因になっているのです。