ホウ酸団子の作り方・効果と犬猫の誤飲リスクなどまとめ
ホウ酸団子は、ゴキブリを駆除するための毒えさの一種として古くから利用されています。その効果は高く、Japanese Housan-Dangoという名称で海外にも広まっています。
作り方から誤飲のリスクまで、ホウ酸団子について詳しく解説します。
ホウ酸団子の効果
ホウ酸効果で脱水症状を起こさせる
ゴキブリの好物である玉ねぎや、ジャガイモ、小麦粉、砂糖、米ぬかなどを誘引材料とし、そこにホウ酸を混ぜたものがホウ酸団子です。
ゴキブリには視覚がほとんどありません。判断できるのは明暗程度であり、物体と景色を判別することも困難です。その分、嗅覚が非常に鋭く、臭いを元に食べ物にたどり着けるため、大好きな臭いでおびき寄せているというわけです。
ホウ酸団子を食べたゴキブリは脱水症状を起こし、乾燥死します。ホウ酸の成分がゴキブリの消化器系に作用しているとされていますが、詳細はまだ不明のままです。
ゴキブリは表皮と経口の二ヶ所からホウ酸の毒を摂取し、脱水症状を起こし、水を求めてさまよいます。そのため、ホウ酸団子設置後は水まわりで死骸を発見することが多くなります。あちこちに死骸が散乱しにくいことも、ホウ酸団子のメリットと言えるでしょう。
ホウ酸の効果は非常に高いですが、遅効性です。ゴキブリの個体の大きさにもよりますが、効果が出るまでに半日~3日、遅いものでは4~5日かかるものもあります。しかし、この半日~5日も大切な期間なのです。
毒が徐々に効いてくる期間に、ゴキブリは仲間に「この家が危険である」というサインを出します。このサインを受け取った仲間は警戒し、そのうち家から逃げ出し、来なくなります。これが毒えさの一番のメリットと言えます。
死骸や糞を食べたゴキブリも連鎖的に駆除可能
残念ながら、ホウ酸団子に含まれるホウ酸の濃度によっては、ゴキブリ本体にしか効果がありません。本体だけでなく、その死骸や糞を食べたゴキブリも駆除したければ、濃度の濃いホウ酸団子を作りましょう。
ホウ酸の濃度は下記の計算式で求めることができます。
ホウ酸の分量÷総重量×100
濃度が40%以上であれば、死骸や糞にも効果が得られます。市販のものは5~70%と幅があるため、効果に差が出てしまいますが、自分で作るなら濃度の調整が可能なので、効果の高いホウ酸団子を作ることができます。
濃度の高いホウ酸団子の作り方は、このページの「ホウ酸団子の作り方」の項目をご覧ください。
約50日間の対策で幼虫まで撃退
ホウ酸団子は食べてこそ意味があるものなので、卵への効果はありません。そのため、卵から孵った幼虫を駆除する必要があります。
卵の孵化は季節によってかかる日数が変化します。平均的には30~50日程度、冬場はもっと長くかかる可能性もあります。
したがって、ホウ酸団子の効果でゴキブリを見なくなったとしても、幼虫を撃退するために少なくとも50日間(長くても3ヶ月程度)はゴキブリ対策を続けておくことが大切です。
ホウ酸団子はゴキブリを呼び寄せるのか?
ホウ酸団子について「ゴキブリの好物を混ぜて作ることで、余計なゴキブリまで呼び寄せてしまい、逆効果にはならないのか」という質問が寄せられていますが、大抵の場合は誤解で、ホウ酸団子の誘引力に外からおびき寄せるほどの効果はありません。
あくまで、部屋の中のゴキブリを駆除するためのものですから、ホウ酸団子に誘われてわざわざ外から入ってくることは基本的にはありません。(ただし、近隣に非常にゴキブリの多い家があるなど特殊な環境下については対象外です。)
ちなみに、最近では外に置いて外から入ろうとするゴキブリを防ぐタイプの駆除剤(いわゆる忌避剤)も販売されています。家にホウ酸団子を置くことで外からの侵入がどうしても心配という方は、忌避剤と併用するのもいいでしょう。
ホウ酸団子の作り方
ゴキブリの死骸や糞にも効果のある、ホウ酸濃度40%以上のホウ酸団子を作ります。
もっとホウ酸濃度の高いものを作りたければ、単純にホウ酸の量を増やせばいいだけですが、玉ねぎなどの誘引材料をあまり減らしてしまうと、ゴキブリの喫食率も落ちてしまいます。とはいえ、誘引材料ばかりでホウ酸を入れないとゴキブリは駆除できません。また、粉類を固めるには必ず水分が必要になります。固めるために水分を加えてしまうと総重量も増えてしまうため、結果的に40~50%程度のホウ酸団子になってしまいます。
家でホウ酸団子を作る際には、ホウ酸の割合と誘引材料の割合が重要です。以下の作り方と分量を参考にしてみてください。
直径2~3cmのホウ酸団子13~15個分
※もっと個数を増やしたい場合は、必要な分だけ材料を倍にして作ってください。
■材料
ホウ酸50g
小麦粉30g
玉ねぎ(根と皮をとったすりおろし)35g
砂糖 小さじ1強
牛乳 適量
焼肉のたれ 数滴
■用意するもの
容器(ボウル)
計量スプーン
測り
おろし器
ビニール手袋
1.玉ねぎをすりおろす
おろし器を使い、玉ねぎを大根おろしのようにすりおろします。
ミキサーを使ってドロドロにしても構いませんが、ミキサーに玉ねぎの臭いが残ってしまいます。臭いが残るのが嫌な方は、面倒でもすりおろすことをおすすめします。
2.容器にホウ酸、小麦粉、砂糖を入れて混ぜる
このとき、粉や砂糖に固まりのないように混ぜましょう。
3.すりおろした玉ねぎを入れてよくこねる
こねる際は必ずビニール手袋をはめるようにしてください。素手でホウ酸を触ると手が荒れてしまう可能性があります。
4.耳たぶほどの固さになるように牛乳を適量加える
玉ねぎのすりおろしにも水分があるため、必要ない場合は加えなくても問題ありません。牛乳の臭いが気になる方は水を代用してください。
5.焼肉のたれを数滴加えてこねる
ゴキブリは甘いものが大好物で、砂糖、果物、はちみつ、玉ねぎ、昆布などが多く入っている「焼肉のたれ」には捕獲効果が高いため、誘引力をアップさせることができます。
玉ねぎだけでも十分に誘引力はあるので、焼肉のたれがない場合は特に入れなくても問題ありません。
6.適当な大きさの団子にし、天日干しをして乾燥させる
適当な大きさに丸め、ゴキブリが喫食しやすいように真ん中を押してへこませ、写真のように平たい形にしましょう。
このまま置いてしまうとカビが生えたり、腐ったりしてしまうので、2~3日程度天日干しすることでそれらを防ぎます。乾燥させる際、新聞紙や木の板の上に置くと臭いが移ってしまい、効果が薄れます。アルミホイルやプラスチックのトレイに置くようにしてください。
※天日干しする際は野生の鳥や猫など、他の動物が誤飲してしまわないように目の細かいネットをかけるなど工夫が必要です。
今回は100円ショップに売っているフードカバーを利用しました。ホウ酸団子をアルミホイルごと天板に乗せ、これをかぶせることで誤飲を防げるので便利です。
以上のレシピで直径2cm程度のホウ酸団子が13~15個できます。少しの量でたくさん作れるので、市販のホウ酸団子よりも経済的です。
上記のレシピの総重量は約120gです。よって、ホウ酸の濃度は、
50g÷120g×100=41.6666666……
となり、約42%の濃度のホウ酸団子を作ることができました。この濃度のホウ酸団子であれば、死骸や糞を食べたゴキブリへの効果も十分に期待できます。
ホウ酸団子の設置と時期
3月中旬からの設置で効果上昇
できればゴキブリが活動を始める前からホウ酸団子による対策を始めたいところです。そのためには、まずゴキブリの活動期間を把握することが大切です。
ゴキブリは気温が20度を超えると発育が早まり、25度近くになると繁殖を繰り返し始めます。そのため4~5月は夏に比べると発生数は多くありません。発生数が少なく、まだ繁殖機能のない幼虫を駆除してしまえば、その後の繁殖を大きく防ぐことが可能です。
近頃では春先でも暖かいことが多いため、暖かくなり始めた3~4月のうち(3月中旬がベスト)にホウ酸団子を設置するのが好ましいでしょう。
ホウ酸団子は台所付近を網羅するように設置
ゴキブリに喫食させることが目的なので、ゴキブリがよく通る場所に設置しなければ効果は半減してしまいます。今までにゴキブリを見かけたことのある場所や、ゴキブリが逃げていった通り道に設置しましょう。
通り道がわからないという方は、まずは部屋の四隅に置いてみてください。
その他設置場所の例としては、
・台所のシンクの下
・洗面台付近
・引き出しの中や裏側
・ベランダの排水溝付近
・冷蔵庫の下や後ろ
・ガスコンロの下
・炊飯器の下
・電化製品のモーター付近
・段ボールを置いている場合はその付近
などが挙げられます。
■ホウ酸団子の設置例
また、ゴキブリは堂々と玄関から入ってくることも少なくありません。玄関の隅への設置は忘れがちなので注意してください。
効果持続には焼肉のたれ
手作りホウ酸団子の効果は3~6ヶ月程度です。それは、一緒に混ぜ込んでいる玉ねぎや小麦粉、砂糖などの誘引成分が切れてしまうためです。誘引効果がなくなると、喫食率は著しく低下してしまいます。上記期間が過ぎたらできるだけ早く取り替えましょう。
ただし、期間の過ぎたものであっても「焼肉のたれ」を数滴垂らすことで誘引効果を延ばすことができます。ホウ酸の効果は衰えないので、焼肉のたれを利用して上手く誘引力を持続させてみてください。
子どもやペットの誤飲リスク
小さな子どもやペットのいる家では、安全面からホウ酸団子の使用は基本的に控えることをおすすめします。
しかし、どうしても使用したい場合は、
- ・ホウ酸団子を置いている部屋に子どもやペットを絶対に入れない
- ・子どもやペットの手が届く範囲にホウ酸団子を置かない
- ・簡単な蓋つきの容器に入れて使用する
以上をしっかりと行い、誤飲事故を未然に防ぐようにしましょう。
ホウ酸団子が及ぼす危険性
注意をしていても子どもやペットは、知らないところでさまざまなものを口にしてしまう場合があります。
ホウ酸は人間にとっては比較的安全なものとされていました。というのも、ホウ酸は過去に消毒や洗浄剤に用いられており、危険という認識もされていませんでした。一部食品の防腐剤としても使用されていたほどです。
しかし、近年、中毒や死亡例が報告され始め、食品への添加はすべて禁止、医薬品としては目の洗浄消毒に限って2%の濃度で使われるのみとなりました。
このような中毒や死亡例が報告されているため、小さな子ども、ペットのいる家庭ではできる限りホウ酸団子を使用しないことをおすすめします。
乳幼児は少量でも重症化しやすい
経口致死量 | 経口中毒量 | |
---|---|---|
成人 | 15~20g | 1~3g |
幼児 | 5~6g | 1g未満 |
乳児 | 2~3g | 1g未満 |
上記の表を見てみると、子どもが中毒になってしまうホウ酸の量は実にわずかであることがわかります。つまり、乳幼児に近い体重を持つペットにも同じことが言えるということです。
ホウ酸による中毒症状は、吐気、腹痛、下痢、発疹、ひどい場合には、血圧低下やけいれん、腎臓の障害を起こすこともあります。ホウ酸は症状が現れるまでに数時間かかることがあるので、誤飲直後だけではなくその後も注意深く様子を見ることが重要です。
■ホウ酸による中毒の主な症状一覧
症状の現れる場所 | 主な症状 |
---|---|
消化器系 | ・吐き気 ・嘔吐 ・下痢 ・激しい腹痛 ・出血性胃腸炎 ・青緑色の便 |
神経系 | ・頭痛 ・嗜眠(昏眠) ・不穏 ※1 ・振戦 ※2 ・痙攣 ・反射異常 ・昏睡 |
肝・腎 | ・腎障害 ・尿細胞壊死による乏尿 ・蛋白尿 ・無尿 ・肝障害(黄疸、肝腫)もまれに起こる |
呼吸器・循環器系 | 下記はすべて重症時の症状 ・脈拍微弱 ・頻脈 ・チアノーゼ ※3 ・血圧低下 ・重度の脱水症状 ・循環虚脱 ・呼吸停止 |
その他 | ・発疹 ・落屑 ・低体温 ・発熱 |
参考文献:財団法人日本中毒センター
※1 周囲への警戒心が強く、興奮したり、大きな声で叫んだり、暴力を振るったりしやすい状態。
※2 筋肉の収縮、弛緩が繰り返された場合に起こる不随意のリズミカルなふるえのこと。
※3 血液の酸素欠乏によって皮膚などが暗紫色になること。
万一を考えて応急処置を把握し、必ず受診する
少しなめた程度では水か牛乳を飲ませて様子を見ます。これは体内に入ったホウ酸の濃度を希釈するためです。大量に食べてしまった場合には、牛乳を飲ませ、できれば吐かせて医療機関を受診するようにしてください。
重症化するのはレアケースであるとはいえ、ホウ酸は人体に害を及ぼす物質であることには変わりありません。量にかかわらず、口にした際には病院を受診することをおすすめします。
ホウ酸の粉末だけでもゴキブリ駆除が可能
ホウ酸そのものを床にまくだけで、ゴキブリを駆除することも可能です。
ゴキブリには危険な食べ物の臭いを学習する能力があります。仲間が死に至った原因を察知し、その臭いの食べ物は避けて通るようになるという適応能力に優れています。
ということは、同じ臭いのホウ酸団子をずっと利用していても、いずれ食べなくなってしまう可能性があるということです。
誘引効果のある玉ねぎを、ジャガイモや米ぬかで代用すると臭いを変えることは可能です。ただ、そんな工夫を繰り返すよりも簡単で、効果的なのがホウ酸の粉末なのです。
ホウ酸は無臭であり、それそのものに誘引力はありません。ゴキブリがホウ酸の粉を好んで食べるわけでもありません。それでもゴキブリは死に至ります。
ホウ酸の粉末で駆除できる理由は以下の2つです。
- ・粉末の上を歩いたゴキブリの体にホウ酸が付着し、そのままの状態で毛づくろいすることで喫食してしまう
- ・気門(呼吸する穴)から微量のホウ酸を体内に吸収してしまう
ゴキブリにとって、ホウ酸は猛毒であるため、極微量のホウ酸が体内に入るだけで命が尽きてしまいます。
ホウ酸粉末のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・蒸発などしないため、一度まけば半永久的にその場所に残る ・ホウ酸団子のように食品ではないため、腐敗の心配がない ・元々が無臭であるため、誘引成分の効力を気にする必要がない |
・誘引成分がないため、巣や通り道が分からない場合は効果を得ることができない ・場所によっては掃除が面倒になる場合もある ・子どもやペットのいる家庭では使用しないほうがよい |
上記の表のように、ホウ酸そのものを効率的に利用するには、ゴキブリの巣や通り道を熟知する必要があります。しかし、裏を返すと通り道さえ分かればホウ酸をまくことで絶大な効果を得られるということです。
通り道の例は「ホウ酸団子の設置場所」の項目を参考にしてください。
まとめ
ホウ酸団子でのゴキブリ対策は、うまく利用することで非常に高い効果があります。しっかりとゴキブリの習性を把握し、ゴキブリのいない家作りを目指しましょう。
以下にホウ酸団子の要点についてまとめます。
- ・ホウ酸濃度40%以上のもので死骸や糞にも効果が現れる
- ・ホウ酸団子を作る際、ホウ酸の割合と誘引材料の割合が重要となる
- ・ホウ酸団子の効果は約3~6ヶ月程度
- ・期限の切れたホウ酸団子に焼肉のたれを数滴垂らすことで、効果を延ばすことが可能
- ・子どもやペットのいる家では使用を控える
- ・やむを得ず使用する際は十分に注意する
- ・ホウ酸団子よりもホウ酸そのものまくことでもゴキブリ駆除は可能
また、隣の家との間隔が狭い家やマンションでは、いくら自分の家でゴキブリ対策をしていても隣から侵入されてしまう……というようなことがよくあります。
特に噴煙タイプの駆除剤を近隣の方が使用したことで、ゴキブリが逃げまどい侵入されてしまうケースも多いです。そういった家に住んでいる方は、ホウ酸団子をベランダにも置いておくといいでしょう。
室内に侵入しているゴキブリを駆除すること、室内に侵入されないように防ぐことと、目的によってホウ酸団子やホウ酸の扱い方も変わります。目的に合わせてホウ酸を上手く扱ってください。
そして、ホウ酸団子を使用してみても効果が感じられなかったり、子どもやペットがいてホウ酸団子の設置が難しい場合は、業者に相談してみるのもよいかもしれません。被害状況を詳しく聞いてくれたり、具体的な駆除方法なども教えてもらえる場合があります。