ゴキブリの生態から考える予防の方法

ゴキブリを予防するには、まず、ゴキブリという昆虫について正しい知識を持つことが大切です。ゴキブリの被害をどうすれば抑えられるのか、ということを念頭に、ゴキブリに関する基本的な情報を整理していきましょう。

ゴキブリの種類と特徴

ゴキブリの種類は世界で約3000~4000種あり、日本には50種程度いると言われています。このうち、家の中で見かけるものはほとんどが、チャバネゴキブリかクロゴキブリです。

チャバネゴキブリは成虫でも体長は約12mmと小型であり、名前通り茶褐色です。前胸背面にハの字の黒い紋があります。日本国内では個体数が最も多いと言われています。他のゴキブリに比べ、成長まで約2か月と短く、成虫の寿命は雄90日、雌165日です。世界で生息し、主には冷暖房が効いたビルなど、24時間温度が安定した場所を好みます。日本でも屋外では越冬できず、-5℃に24時間さらすと死にますが、環境のよい所では驚くほどの繁殖力を持ち、殺虫剤に抵抗性を持つものまで出てきていますので、駆除するのは大変難しいゴキブリです。

クロゴキブリは体長が約3~4㎝あり、チャバネゴキブリと比べ大型です。濃褐色の光沢ある黒っぽい見た目が特徴です。幼虫は赤茶色でチャバネゴキブリと見間違えやすいですが、黒い紋はありません。生息地が主に屋外ですので、屋外で越冬することも可能です。成虫まで2年かかり、成虫雄の寿命は207日、雌は197日です。一匹のゴキブリは一生で400個前後の卵を20~30回に分けて産み、5月~9月の間、最も活発に活動します。

クロゴキブリとチャバネゴキブリ

飲食店などではチャバネゴキブリが多く、一般家庭で見かけるのはクロゴキブリが多いでしょう。チャバネゴキブリの駆除は難しいことが多く、住み着かれてしまった場合は、プロの駆除業者に依頼するのが得策です。

ゴキブリの身体的特徴と性質

体長は10mm~100mmに達するまで様々で、家の中で見かける種は10~40mm程度です。形状は全身が平たく、狭い場所に潜むのに都合がよい体型をしています。6本の脚に固い物質(キチン質)の外皮。頭部は胸部の下に隠れています。口には大あごがあり、食物をかじって食べます。前方に突き出した一対の触角があります。複眼の機能はあまりなく、この一対の長い触角と尾部の尾毛(びもう)がとても発達し、暗い環境下でも周囲の食物や天敵を敏感に察知する力があります。脚が発達し、逃げ足が速いことは知られているところです。

成虫には翅が 2 対 4 枚あるのが主流ですが、前翅だけ伸びる種類、もしくは翅が全く退化してしまった種類もおり、この種は飛翔能力がありません。また、翅が揃っている種でも飛翔能力は低く、短距離を直線的に飛ぶ程度です。

体表に光沢をもつ種類が多くいます。体の構造としては、外側の固い殻(キチン質)の下に「脂肪体」、その下に内臓(循環器や神経)があります。このキチン質と内臓の間にある脂肪体に貴重な栄養を蓄えておける機能を持っています。

ゴキブリは体になにかが接触している状態を好む傾向があり、「接触走性」と呼ばれています。例えば、チャバネゴキブリは1mm半から1センチ3mm程度の隙間しかない場所を好んで住み着きます。一般的には、好んで住み着く場所は暖かくかつ湿度が高く、餌や水に恵まれ、人目が届かず狭くて暗いという条件の箇所を生息場所として好みます。

これからの身体特徴・性質からわかるように、ゴキブリはわずかな隙間から暖かい住居内に侵入し、隙間に潜みながら、繁殖していきます。ゴキブリの被害を抑えるためには、まず、できるだけ侵入させないこと、そして、侵入したゴキブリを速やかに駆除することが重要です。

ゴキブリのライフサイクル

ゴキブリは卵→幼虫→成虫という段階を踏んで変態する形で成長する昆虫です。蝶などのように幼虫と成虫で形がまったく違うということはないので、この性質を「不完全変態」と呼びます。

卵は数十個が一つの卵鞘に包まれて産みつけられますが、チャバネゴキブリのようにメスが卵鞘を尾部にぶら下げて保護するものや、サツマゴキブリのように一旦体外で形成した卵鞘を体内のポケット状の器官に引き込んで体内保護するものもいます。また、完全な胎生である種もいます。幼虫は翅がない点以外、成虫とほぼ同じ形をしており、5~7 回の脱皮を経て成虫となります。

クロゴキブリのような大型種は成虫になるのに 1 年半から 2 年ほどかかるものが多く、世代交代の速度は意外に時間がかかります。

ゴキブリのライフサイクル

家の中で幼虫を発見した場合、すでにゴキブリが巣をつくってしまい、繁殖を始めている可能性があります。

ゴキブリの食性

ゴキブリは雑食性で、いろいろなものを食べます。野外に暮らしているときはきのこや植物、動物の糞などを食べています。家の中ですと、人間の食べるものは何でも食べると言っていいでしょう。加えて、糊、紙、皮革、人間が落とした髪の毛や皮脂などもエサにしてしまいます。ゴキブリが好きなものとしては、玉ねぎやビールなどが知られています。

さらに、自分たちよりも小さい昆虫も食べます。顎で蟻を捕まえて、羽以外すべてを食べてしまいます。その他、蛾の卵や蚊、ブユ、スズメバチの幼虫、10センチほどのムカデを常食としていることが報告されています。また、共食いは普通に見られる行動ですし、仲間の死骸も食べます。

ゴキブリが家に侵入してくるのは、食べ物を求めてくることも大きな理由です。ゴキブリのエサとなるものを極力減らし、清潔を保つことはゴキブリ予防にも無関係ではありません。しかしながら、落ちている髪の毛でも食べてしまうゴキブリに対して、家の中からエサをまったくなくすことが難しいのも事実です。やはり、侵入防止と、侵入したゴキブリの駆除が重要なのは変わりありません。

ゴキブリの生活

ゴキブリが活発に動く時間帯は日没後の3時間と夜明け前の1時間と言われています。後の時間は行動せずに休息の時間に充てています。この二つの時間帯に、ゴキブリは毎日決まって餌や水をあさり、別のもっと快適な隠れ場所を求め、将来のパートナーを探します。チャバネゴキブリは夜中に餌を食べます。

数が増えるにしたがって、餌やパートナーや隠れ場所を得るための競争は激しくなり、家の中でまだ占領されていない場所へ移動したり、真昼の明るい時でさえ行動したりと、さらにあつかましい態度をとるようになります。

ゴキブリには集合フェロモンと分散フェロモンという2種類のフェロモンがあることが分かっています。集合フェロモンは、オス・メスも含めて仲間を大勢呼び寄せるフェロモンであり、糞の中にあります。キッチンの棚の下などに、ピンの頭に茶色のインクをつけて書いたような茶色の細い筋が見られるのが、ゴキブリの糞尿の痕跡です。「ローチスポット」と呼ばれるこの痕跡から発せられるフェロモンは他のゴキブリを寄せ付ける性質を持ちます。

ゴキブリの糞は、普通の室温で空気にさらされて1年経過してもまだゴキブリが集めるフェロモンの力を失いませんません。ゴキブリは集団で育つとよく発育するということが報告されており、そのために集合フェロモンを活用し、群れをなしていることが多いのだと思われます。

分散フェロモンは、集合フェロモンと逆の働きを持ち、ゴキブリを遠ざける信号を発するフェロモンです。過密した状態にある時、新しい住居を探す時が来た時に発します。ゴキブリの唾液にあることがわかっています。これらのフェロモンを空気中に発散し、触角にある受容細胞が受け取っています。

ゴキブリはフェロモンの作用によって寄り集まり、巣(コロニー)を形成します。「巣」と言っても、蜘蛛の巣や鳥の巣のように、なにか形をつくるわけではないのですが、シンクの裏側などの狭いところに多数のゴキブリが密集して生活し、繁殖します。飲食店などでは、大量のゴキブリが厨房機器の中に巣をつくっているケースがあります。一般家庭でも、起こりうることですので、そうなる前に予防を施したいものです。

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