蜂の種類と見分け方

蜂は全世界20万種以上、日本にも4000種以上が生息しています。

蜂は世界中に20万種以上が生息している昆虫です。日本だけでも4000種以上が確認されており、その姿・生態は多様なパターンに分かれています。

<体型上の分類とその例>

分類 広腰亜目 細腰亜目
特徴 ・くびれのない寸胴体型
・原始的な種類の蜂
・毒針がない
・集団(社会的)行動をしない
・決まった種類のえさしか食べない
・腰の部分がくびれている
・比較的新しい種類である
・雌は毒針を持つ
・集団(社会的)行動をするものがいる
・食性が多様
・翅が退化したものなど形態がさまざま
ハバチ、クキバチ、
キバチ ほか
ミツバチ、スズメバチ、
アシナガバチ ほか

これらの蜂の中で、人間を刺すのは細腰亜目に限定されます。特に集団で巣を作って行動をするものが、巣を守るために襲ってくるケースが大半です。
日本においてはスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチによる被害が最も多く報告されています。

ここでは、これら3種類についてその生態と見分け方を解説していきます。

日本での被害件数トップ3/スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチ

ひと口にスズメバチ・アシナガバチ・ミツバチといっても、世界中に多数の種類が生息しています。

名前 スズメバチ アシナガバチ ミツバチ
種類 ・オオスズメバチ
・ヒメスズメバチ
・キイロスズメバチ
(ケブカスズメバチ)
・コガタスズメバチ
・モンスズメバチ
・チャイロスズメバチ
・クロスズメバチ
・ツマグロスズメバチ
・セグロアシナガバチ
・キアシナガバチ
・フタモンアシナガバチ
・コアシナガバチ
・キボシアシナガバチ
・ヤマトアシナガバチ
・ヨーロッパアシナガバチ
・セイヨウミツバチ
・トウヨウミツバチ
(ニホンミツバチ)
・オオミツバチ
・サバミツバチ
・キナバルヤマミツバチ
・クロオビミツバチ
・ヒマラヤオオミツバチ
・コミツバチ
・クロコミツバチ
(全9種類)
特徴 ・体が大きい
・大きいものは40mmにも
・攻撃性が高い
・外壁に覆われた巣
・他種の巣を襲う
・針から毒液を飛ばす
・細身の体
・大きいもので20mm台
・攻撃性は高くない
・素早さ・小回りは苦手
・市街地に多い種類も
・巣穴が剥き出しの巣
・丸みを帯びた小さい体
・攻撃性は低い
・針を使うと死ぬ
・地域ごとの亜種が多い
・女王蜂の寿命が長い
(1~8年生きるものも)
・板状の巣をつくる

スズメバチ

日本で最も被害が多数報告され、重症例も多い危険な蜂です。毒性は非常に強力で、攻撃性の高い、凶暴な種類も多くみられます。

他種の蜂に比べて大きくがっしりとした体をしていて、巣もまた大型化する傾向にあります。場所も地中や木の根の部分など発見が困難な場所に作られることが多く、山登り・フィールドワークの最中にうっかり巣に近づいた結果被害を受けるケースが少なくありません。

幼虫は肉食ですが、成虫はミツバチと同じように樹液・蜜を食べて生活します。

アシナガバチ

細身のすらりとした体が特徴の、都市部でも頻繁にみられる蜂です。攻撃性は高くないため、巣に近づかない限り、こちらから手を出さなければ刺されることは稀です。毒もあまり強くないものの、痛みを引き起こす成分を多く含んでいます。

スズメバチ・ミツバチに比べると巣のサイズは小さく、幼虫の巣穴が剥き出しになった半球状のものをつくります。屋外の開放的なところにも、場所を選ばず巣をつくっていきます。都会のちょっとした家の庭・ベランダにも巣を作るため、気付かず近づいて刺されてしまうケースが多く見られます。

巣を撤去しても、生き残りの働き蜂がいる場合、同じ場所にまたつくりなおそうとする習性があります。

細く身軽そうな外見に反して、小回りを利かせて素早く飛ぶのはあまり得意ではありません。幼虫のえさは芋虫など飛べない、動きの遅い虫が多く、成虫は樹液などを舐めます。

ミツバチ

現在日本に生息するミツバチは、

  • ・ニホンミツバチ(トウヨウミツバチの一種)
  • ・セイヨウミツバチ

の2種類です。
ミツバチの針は刺さると抜けなくなり、刺した相手の体内に残されます。この針は内臓と繋がっているため、攻撃に使ったミツバチは死んでしまいます。
体内に持つ毒の量は微量ですが、毒性そのものは、セイヨウミツバチのものが日本にいる社会性行動をする蜂の中では最も強力です。

単独行動時の攻撃性は低く、おとなしい蜂です。巣に危険が及ばない限り攻撃してくることはありません。

ただし養蜂場の近く、あるいは田舎でお子さんが触ろうとして刺される場合があり、注意が必要です。養蜂場スタッフが作業中に刺されてショック症状を起こしてしまうケースもあります。

更にごく稀に、野生のミツバチが民家の屋根裏に巣を作ってしまうこともあります。こういった駆除の際は業者に頼む以外にも、地域次第では養蜂業者・ボランティアが無料で行ってくれる場合があります。

また、アメリカにはスズメバチ以上に攻撃的な性質のキラービー(アフリカナイズドスズメバチ)が多数生息しています。おとなしいセイヨウミツバチと判別する間もなく襲いかかってくることがありますから、海外旅行に行く場合はミツバチを見てもけっして近寄らず、すみやかにその場を離れるようにしてください。

スズメバチの特徴と見分け方/最大サイズのオオスズメバチ、小型のキイロスズメバチ

<主なスズメバチの種類・特徴>

種類 オオスズメバチ キイロスズメバチ
(ケブカスズメバチ)
ヒメスズメバチ コガタスズメバチ
体長 女王蜂:40~45mm
働き蜂:27~40mm
雄蜂:35~40mm
女王蜂:25~28mm
働き蜂:17~24mm
雄蜂:25mm程度
いずれも25~37mm程度 女王蜂:25~30mm
働き蜂:21~28mm
雄蜂:22~28mm
活動期間 5~11月 5~11月 5~9月 5~11月
特徴 体が大きい
腰・背中間が黄色
非常に攻撃的
毒性が最も強い
国内スズメバチ最小
腰・背中間が黄色
非常に攻撃的
黄色が強く発色
都会でも見られる
巣を引っ越すことも
体が大きい
大きさが一定
腹部先端が黒い
攻撃性は低い
アシナガバチ類を捕食する
オオスズメバチによく似ている
攻撃性は低い
都会でも見られる
巣の場所 木の根もと
土中
樹洞
(初期)
樹洞
床下
屋根裏
閉鎖的な場所
(群れの多数化後)
樹木の上
軒下
開放的な場所
※初期のまま巣を拡
大していく場合も
屋根裏
土中
物置
屋根裏
土中
物置
巣の形状 外からは見えない
外壁に覆われた形
底部分は剥き出し
大きなボール型
国内では最大規模
直径50cmを超えるものも
釣鐘型
巣の大きさは最小
底部分は剥き出し
(初期)
逆さにしたトックリのような形
(働き蜂誕生後)
ボール型

オオスズメバチ

大きいものでは体長5cm近くなるなど、日本に生息する蜂の中で最も大きく危険なのがこのオオスズメバチです。攻撃性が非常に高い上、人間でも体重1kgあたりたった4.1mgで致死量となる、非常に強い毒を持っています。
飛行速度も最高で40km/hというスピードを誇り、体が大きいぶん、体内に持つ毒の量も最も多いものとなっています。

巣は土の中、木の中の空洞や根のすき間につくられるため、外から発見することは困難です。このため、気付かず巣に近寄ってしまう危険性が非常に高くなっています。

キイロスズメバチ(ケブカスズメバチ)

キイロスズメバチは、国内のスズメバチの中で最も小型の種です。北海道に生息するものをケブカスズメバチ、本州以南のものをキイロスズメバチと呼びます。
スズメバチの中では細身の体をしていて、その名のとおり全身に占める黄色の割合が多いのが特徴です。また、その黄色も他種のスズメバチに比べて発色が強く、鮮やかなものになっています。

性質は凶暴で、とても強い攻撃性を持っています。スズメバチに刺される事故の多くはこのキイロスズメバチによるものです。都市部にも頻繁に見られ、ジュース・お菓子に引き寄せられて民家に侵入するケースもあります。

巣の場所は、つくられる初期には床下・屋根裏を好んで選ぶことが多く、群れの規模が膨大になってくると引っ越して、外の開放的な空間に新しい巣を作ります。
最終的に巣の大きさはスズメバチの中でも最大規模のものとなり、巨大なボール型になります。

ヒメスズメバチ

日本で2番目に大きい種類のスズメバチです。針の付け根、お腹の先端部が黒いのが他のスズメバチと違う最大の特徴です。スズメバチの中では一番おとなしく、巣を刺激しないかぎりほとんど攻撃してくることはありません。幼虫のエサにはアシナガバチを好んで捕食します。

巣はスズメバチの中で最も小さく、下部が開いた釣鐘型をしています。天井裏・物置といった閉鎖された空間を好み、1~2m程度のあまり高くないところにつくります。

コガタスズメバチ

コガタスズメバチは、オオスズメバチと非常によく似ています。外見では体の大きさ以外、お腹の黄色い部分の面積がやや少ない点と、顔の中心の形(頭楯といいます)でしか区別がつきません。体格の近いもの同士だと、一見しての判別は困難です。

攻撃性はあまり高くなく、都市部でもよく見られます。
女王蜂のつくる巣はトックリ型の特徴的な形をしていて、軒下・ガレージ、樹木の上などの開けた場所に多くつくられます。働き蜂が巣の中で誕生し飛び立つようになると、その手で巣は増築されてゆき、キイロスズメバチのものによく似たやや小型の、球体の巣につくり替えられます。

その他のスズメバチ

また、分布数などの点では上記のスズメバチには劣るものの、数多くの種類が日本には生息しています。

モンスズメバチ

お腹の黄色と黒の縞模様が波を打っているのが特徴の蜂です。攻撃性が強く、夜も活動するという珍しい習性を持ってます。
閉鎖された空間に巣を作りますが、キイロスズメバチ同様、群れの規模に応じて巣を引っ越すことがあります。
蝉を好んで幼虫のエサにしますが、近年、蝉の減少とともに数を減らしていると言われていて、人前に姿を見せることが少ない蜂です。

チャイロスズメバチ

全身が黒と茶色の濃い色をした、頑丈な皮膚で包まれた蜂です。キイロスズメバチやモンスズメバチの巣を襲い、女王蜂を殺して乗っ取って(社会的寄生)しまいます。乗っ取られた巣の働き蜂はチャイロスズメバチを女王と思い込んで、共存していくようになります。

中部地方より北に生息する蜂ですが、絶対数は多くありません。

クロスズメバチ

体の黄色い部分の色が、白に近い色合いをしています。お腹の縞模様も黄色のラインが他のスズメバチより細い傾向にあります。
攻撃性は低く、毒性も強くありませんが、食用に養殖を行っている地域があり、近隣で被害が出ることがあります。巣は主に土の中につくられますが、民家の壁の中に入り込んで巣にしてしまうというケースもみられます。

ツマグロスズメバチ

日本では沖縄県のみに生息するスズメバチです。頭から胸にかけてと、お尻の部分が焦げ茶色で、お腹の半分くらいが黄色という独特の色合いをしています。
沖縄では農作業中にこの蜂に刺される被害が起きています。
巣の形はコガタスズメバチと同じく、初期にはトックリ型をしており、働き蜂が生まれたのちに球体の巣に改造されていきます。

危険な蜂の種類は?

広腰亜目などの比較的大人しいハチや、寄生バチ、人体に刺さらない程度の針しかないハチなど、こちらから近づかなければ攻撃してこないハチも多いです。ただ、針を持つ以上、どのハチにも人を刺す可能性があり、油断はできません。

中でも、スズメバチの仲間は特に狂暴で危険です。攻撃性が高い上に、強力な毒針を持っているため、刺されると非常に危険です。

スズメバチの仲間と思われる巣を見つけたら絶対に近づかず、速やかに避難することが大切です。軒先や天井裏、庭の木や土の中などに巣を作る事が多いので、巣を見つけたら駆除業者を利用する事をオススメします。

また、実際に巣が見当たらなくても、スズメバチ本体をよく見かけたら近くに巣がある危険性があります。知らずに近づいてしまうとたいへん危ないので、蜂本体をよく見かける場合なども業者に相談してみましょう。

【参考】蜂の巣を発見した場合の正しい対処法

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