賃貸オーナーの疑問に専門業者が回答 マンションの鍵交換Q&A
最近は、個人の方でも賃貸オーナーになる人が増えてきました。マンション・アパートの経営をしていると、入居者との間でさまざまなトラブルが起こりがち。中でも、「鍵」にまつわるものが少なくありません。
インターネットの質問サイトをのぞいてみれば、オーナー側・入居者側双方から、賃貸物件の鍵に関する疑問や悩みが多く寄せられているのがわかるでしょう。
そこで、賃貸物件(マンションやアパート)の鍵に関するよくある疑問や悩みについて、鍵の専門業者に取材を行いました。鍵についてお悩みの賃貸オーナーの方、あるいは入居者の方の参考になればさいわいです。
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Q:入居時の鍵交換費用は誰が負担するべきですか?
A:国のガイドラインは貸主側としていますが、実際は入居者が負担することも多いようです
賃貸物件の鍵交換について、法律では明確なところを定められてはいません。費用負担についても、入居者負担であることが多いように見受けられますが、突き詰めると、オーナーと入居者の間の取り決めにすぎないのです。
実は国土交通省が提示している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、入居者が変わることで発生する鍵の交換費用は貸主側負担が相当とされています。
ただし、ガイドラインはあくまでガイドラインにすぎず、法的な強制力はありません。そこで、入居募集時の条件や賃貸契約書などで、鍵交換の費用を入居者側に設定しているケースが多いようです。
上記のガイドラインを知っている入居者が違和感を抱くようなら、話し合いとなります。気をつけたいのは、募集チラシなどで入居者負担としていても、契約書に鍵交換について定めていなければ、入居者が確実に同意したとみなされない場合があります。トラブル募集のためには賃貸契約書にはっきり含めておくことが大切です。
Q:入居者が「鍵は交換しなくてもいい」と言っているのですが……?
A:鍵交換は義務ではありませんが、交換しておいたほうが無難です
入居時に、鍵を交換することをオーナーに義務付ける法律はありません。しかし、セキュリティ上、交換したほうが安全ですし、気持ちの上でも安心感があります。入居者としても交換を希望する人が多いため、交換することが習慣的になっているにすぎないのです。
で、あれば、入居者自身がそれで構わないなら、交換しなくても問題ないのでしょうか?
交換が義務づけられているわけではないので、交換しなかったことそれ自体に、法的な問題などは生じません。ですが、どちらかと言えば交換しておくほうが無難でしょう。
交換が不要と主張する入居者も「空き巣に入られていい」と思っているわけではありません。単に、鍵交換費用が入居者負担である場合に、費用を負担したくないという意図があるだけなのです。万が一、後で空き巣の被害などが発生し、その原因が鍵交換を怠ったことによるのではないかという疑いがあったとき、入居者は納得するでしょうか。いざそういう事態になれば、やはり鍵を交換しておくべきだった、と入居者も思のではないでしょうか。そして、もしも実際に、鍵交換しなかったことが空き巣被害を招いたと立証されてしまえば、オーナーが責任に問われないとも限りません。
そんなケースは非常にまれであるとは思いますが、「もしもの時に、お互い気まずくならないよう鍵は交換しておきましょう」と言って、交換を勧めるのが良いのではないでしょうか。鍵交換が不要と申し出る人は、費用を抑えたいだけですので、どうしても譲らない場合は、費用面で譲歩したうえで、交換自体は行うのが良いでしょう。
Q:入居者に本当に鍵を変えたのか疑われています……
A:鍵交換時に立ち会ってもらうのがいいでしょう
新しい入居者が決まれば、部屋の鍵は交換するのが普通です。交換費用を入居者が負担した場合、「費用だけとられて、交換はされていないのではないか?」と疑いを抱く人がいるようです。
交換していないのではと疑う根拠として、「交換されたはずの鍵が、古びて見える」と主張する入居者もいます。鍵自体は手元に保管しておいて、入居者が変わるごとに、使い回して交換していると、確かに鍵そのものは新しく見えません。鍵交換の仕組みについて説明して理解してもらいましょう。
こういったことが起こらないよう、入居者立ち会いのもとで鍵を交換するのもひとつの方法です。
なお、最近は、諸々のトラブルを敬遠して、合鍵を所有しないオーナーさんも増えているとのことです。入居者の目の前で鍵を交換し、合鍵が何本あるのか確認したうえで、それをすべて入居者に渡します。合鍵を持っていないので、緊急の場合もオーナーが部屋を開けることができなくなりますが、どんな理由でも、入居者の許可なく部屋に立ち入ると、オーナーの責任が問われるケースも多く、それなら最初から合鍵を持たないことにしたほうが疑いも持たれなくて済むという判断のようです。
Q:鍵交換の費用を抑える方法はないですか?
A:手持ちの鍵製品を使用したり、作業日をまとめるなどの方法があります
鍵交換の費用を貸主が負担するなら、少しでも費用は抑えたいところです。入居者側が負担する場合でも、費用を安くできるなら入居者に喜ばれるでしょう。
鍵交換費用は作業料+部品(鍵)代金という形になり、作業料は業者と交換する鍵の種類によって異なります。簡単な鍵なら3,000円程度から交換できる場合もありますが、おおむね、5,000円以上で、1~2万円程度かかることが多いでしょう。これに、鍵そのものの代金を1万円前後見ておく必要があります。
費用を抑えるひとつの方法は、鍵製品を、新しいものを購入するのではなく、手元にすでにあるものを使用することです。つまり、以前に取り外したものを保管しておき、次にまた入居者が変わったとき、保管しておいた前の鍵と交換すれば、鍵製品の代金は必要なくなります。一棟の集合住宅を所有している場合、各戸のドアには違いがないでしょうから、同じタイプの鍵(シリンダー)をどの部屋にも取り付けることが可能です。所持しているいくつかの鍵を、ローテーションで交換していけば良いでしょう。
厳密には、以前の入居者がひそかに合鍵などを所持していたら、同じ鍵が使われているドアを開けることができてしまいますが、年単位のローテーションで、前とは異なる部屋に使われている以前の鍵を探し当てることは実質、不可能ですので、リスクは少ないでしょう。それでも、入居者の方が難色を示されるようなら、そのぶん費用がかかることを理解してもらって、新しいものに交換するという方法があります。
入居者的に問題がなくても、鍵も使い続けていると劣化していき、故障の可能性が高くなっていきますので、鍵の寿命と言われる5~10年を目安に、製品そのものも交換しておくほうが無難です。
ほかに、複数戸の鍵交換を行う場合、交換作業をする日時を調整して一度にまとめることができれば、業者が訪問する手間が省ける(一度の訪問で複数の作業ができる)ので、作業料の割引を交渉することができます。また、鍵交換の際は必ず特定の業者に依頼することを前提に、値引きを打診してみるのもいいでしょう。
Q:入居者が防犯上の理由でもっと良い鍵に交換したいと言ってきました
A:入居者負担で交換し、退去時に戻してもらえばOKです
古い物件の場合、鍵(シリンダー)が古いタイプの製品であるため、防犯性能に劣るということもあるでしょう。入居者が、その点を不安に思い、より防犯性能に変えたいという要望が出ることもあると思います。
これは入居者都合による鍵交換ということになりますので、入居者の費用負担で鍵交換を実施すれば良いでしょう。
もともとの鍵が最新の製品に比べて防犯性に劣るため、それによって空き巣被害などが発生したとしても、防犯性の高い鍵への交換を行わなかったオーナーの責任を問うのは難しいです。ですので、オーナー側が要望を聞き入れて、オーナーの費用負担で鍵交換を行う必要や義務などはありません。
なお、入居者が入居者の意思と費用負担で交換したその鍵は、入居者のものということになります。また、入居者には退去時に原状回復する義務もありますから、この場合、退去時には元の鍵に戻してもらうのが原則です。そのための費用も入居者負担となります。鍵交換をしたいという申し出を受けたときにその旨を伝え、元の鍵を捨てずに保管しておくよう言っておけばスムーズでしょう。
交換した鍵(シリンダー)は、入居者が持っていってもらって構いません。といっても、引っ越し先で使えることはまれですので、残していかれることもあるでしょう。せっかく防犯性の高い鍵に変わったのだから、ということで、そのまま使い続けたくなるかもしれませんが、入居者が変わる以上、鍵交換はしなくてはいけないでしょうから、結局、取り外して処分することになります。
Q:入居者から緊急連絡があり、鍵の紛失・故障でドアが開けられないそうです
A:専門業者に連絡し、入居者負担で対応してもらってください
入居者が鍵を紛失して部屋に入れなくなったとか、鍵が破損するなどして開けられなくなった場合、オーナーに連絡があることと思います。といっても、オーナー自身にはどうすることもできない場合が多いでしょう。鍵を紛失した場合で、オーナーが合鍵を持っており、対応できる状況にあるなら対応しても構いません。
そうでない場合は、専門業者に連絡することになります。懇意にしている業者があるなら、入居者に連絡先を伝え、後は入居者と業者の間でやりとりしてもらって問題ありません。なお、専門業者によると、「鍵が壊れた!」等と言って連絡を受けた場合でも、利用者のごく単純な勘違いであるケースは少なくないとのこと。ドアが開かないとパニックになってしまう人も多いですが、落ち着いてよく確認するよう伝えると、案外、それで解決してしまうこともあります。
間違っても、自力で開けよう(ピッキングなど)としないよう注意しておくと良いでしょう。余計なことをして状況が悪化すると、業者が作業する費用が高くなってしまうことがあります。
こういったケースで、鍵の修理や交換が発生した場合、費用は入居者負担であるのが一般的です。鍵の紛失などは入居者の過失だからです。ただ、通常の範囲で使用しているのに、突如発生した鍵の故障をどう考えるかは微妙なところでしょう。経年劣化や老朽化による不具合なら、貸主の責任範囲であるという解釈も可能だからです。
鍵も機械製品ですから、毎日の使用で劣化しますし、機械としての「寿命」もあります。鍵の種類や使用環境にもよりますが、5~10年程度が鍵の寿命だと言われています。
このあたりは、明確な基準はありませんので、オーナーの考え方次第かと思います。
Q:退去後に、入居者が勝手に鍵交換をしていたことがわかりました
A:入居者の負担で元の鍵に戻してもらいましょう
退去後に、合鍵を使って部屋を開けようと思っても開かない……知らないうちに鍵を交換されていた!?というケースも、まれにあるようです。
結局、入居者が変われば鍵交換はするのですが、オーナーも鍵を開けられない状態からだとまず鍵開けの作業が発生するため、余計な費用がかかってしまいます。そもそも、部屋を開けられないと、いろいろと困ることも多いでしょう。
入居者が入居者自身の費用負担で鍵を交換すること自体は問題がないと言えます。ただ、事前に相談はあるべきでしょう。まして、そのことを告げずに退去してしまうのはもってのほかです。入居者には原状回復義務がありますから、これは入居者負担で元の鍵に戻してもらうことができます。オーナー側で交換して敷金から差し引いて構いません。
なんらかの事情で、以前の入居者に連絡がとれないときや、敷金から差し引くことができないときなどは、やむをえずオーナー負担になってしまいますので、退去時の確認のときに、鍵についてのチェックも怠らないようにしましょう。
なお、前の入居者が残していったものでも、入居者負担で交換した鍵なら入居者の所有物になります。「残していった荷物」などと同じ扱いになりますので、業者に鍵開けをしてもらった後、鍵穴から鍵を作って使い続けるなどというのはNGになります。
前の入居者が残していった荷物は、鍵に限らず、勝手に処分するのは後々問題になることもあります。契約書に、退去後に残された荷物を処分する旨をあらかじめ記載しておくか、退去時に同意書にサインをしてもらっておけば安心です。
Q:入居者に知らせずに、勝手に鍵を開けたり・交換したりしてはいけませんか?
A:どんな理由でも勝手な鍵開け・鍵交換はNGです
たとえば、家賃の入金もないまま連絡がとれなくなってしまった入居者がいた場合などに、「鍵を交換してしまえ!」と強硬手段に出るオーナーの方もいるようです。
心情的には理解できなくもないのですが、これは問題のある行為です。まず、オーナーであっても、そしてどんな理由でも、合鍵を使って勝手に入居者の部屋に立ち入ることはNGであるという判断が、司法で下された例があります。まして、勝手に中の荷物を処分してしまうなども行うべきではありません。
部屋に立ち入ることなく鍵を交換することはできません。ドアの外側から鍵(シリンダー)を取り外すことは防犯の観点からも不可能なのはわかるでしょう。そうなると、勝手な鍵交換はできないと言えます。
家賃の不払いなどでトラブルがある場合は、まず、そちらを解決するのが先決。最終的には法的な手続きを行うことになりますが、いきなり強硬手段に出ることのないようにしましょう。
また、急に連絡がとれなくなった入居者を心配して、勤務先や親族から様子を見たいと連絡がある場合があります。
こういう場合も、合鍵などを使って勝手に入るのは避けたほうが無難です。やはり後々のトラブルになることがありますし、その「勤務先や親族」の人が本物かどうかもわからないからです。そういうケースでは警察に相談しましょう。事件性があるかもしれない場合は必ず警察官の立ち会いが必要です。
Q:入居者が退去する時、鍵に関してオーナーが気をつけておくことはありますか?
A:知らずに鍵交換されていないか確認し、合鍵を回収するのを忘れずに
退去時には、入居者に鍵を返却してもらわなくてはなりません。それにともなって、
・鍵が変更されていないか
・合鍵をすべて回収したか
を確かめておきましょう。
原状回復義務から言っても、入居者が鍵交換をしている場合、退去時には元の鍵に戻してもらうのが基本です。ただし、どのみち次の入居者が入る際にはまた鍵交換を行うのですから、入居者が交換した鍵はもういらないというのであれば、この時点ではそのままにしても構いません。
通常、入居者が鍵交換をするときはオーナーに連絡があるはずで、退去の時点でも交換したことを告げないのは悪質です。黙って交換されていた場合、見た目だけでは気づきにくいので、鍵のメーカーなどを控えておくと良いでしょう。
合鍵については、入居者に3本の鍵を渡していたとして、3本を回収したとき、知らないうちにもう1本の合鍵を作られていたとしても気づきようがありません。ただ、後日、鍵交換してしまえば、とりあえず問題はなくなりますので、最低限、鍵の本数と、できればこれも鍵のメーカー、刻印されている番号の控えがあると確実です。
もともとの鍵と、コピーして作成した合鍵との間には微妙な差異が生じているため、合鍵から合鍵を作製すると差異が拡大していき、不具合をきたすおそれがあります。そのため、鍵をいつかまた使用する可能性があるなら、もともとあった鍵を確保しておくことが大切です。
Q:賃貸オーナーとして専門業者に依頼する場合、気をつけておくべきことがありますか?
A:常に入居者の許可を取り付けておくことです
賃貸オーナーだから、特段に気をつけておくべきことがあるとしたら、やはり、入居者の意思確認だと思われます。
たとえオーナーであっても、入居者の許可なく部屋に立ち入ったりすることはできない、という考え方が現在は主流ですので、鍵開けや鍵交換についても同様です。したがって、オーナーから鍵の専門業者に依頼する際は、最低限、入居者の許可を取り付けておくことが必要で、基本的には直接の立ち会いを依頼するのが良いでしょう。
日程調整などが面倒ですし、書面で許諾を得ておくという方法もないではありませんが、専門業者の中には入居者による直接の立ち会いがなければ絶対に作業をしないというところもあります。オーナーと入居者の間でトラブルが生じた際に、オーナーの依頼を受けて作業をした業者の責任も問われるケースがあるためです。
この点を除けば、賃貸オーナーだからと言って特別なことはないと言えるでしょう。
なお、入居者のいない部屋の鍵開けなどを依頼する場合、個人でも身分証が必要であるように、オーナーとしてその物件の所有者であることがわかるものが必要な場合があります。固定資産税の通知などがあると良いでしょう。
取材協力:株式会社ミライアン
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