形状・タイプで分ける鍵の種類と見分け方
一口に「鍵」といっても、鍵にはたくさんの種類があります。住まいのドアを施錠する鍵だけでなく、車の自動開閉キーやホテルで使うカードキーなども鍵の一種です。中には「鍵」そのものを使用しないキーレスタイプの施錠システムもあります。鍵も時代に合わせて進化しているので、新旧様々なタイプの鍵が存在しています。そんな鍵の見分け方をジャンルに分けて詳しく紹介していきます。
ここでは、現在、一般に普及しているものを中心に、電子錠なども含めた広義の鍵を取り上げ、形状・性能から分類してまとめています。普段使用している鍵が、正確にはどういうタイプの鍵なのか、知っておきましょう。
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シリンダー錠~一般的な住宅等の鍵
現在住宅や建物で使用されている鍵は、シリンダー錠と呼ばれる錠前が主流です。この‟シリンダー”とは、錠前を操作する「鍵穴」、「円筒」のことです。太い円筒(外筒)の中に細い円筒(内筒)が入っており、鍵を差し込み内筒を回転させて開閉するという構造になっています。
外筒と内筒を貫くように複数の障害(タンブラー)があるため、鍵がない状態では内筒は回転しません。鍵のくぼみとタンブラーが一致する=鍵が合っていると、内筒を回転させることができ、鍵が開くという仕組みです。シリンダー錠は大きく分けて5種類あります。
同じシリンダー錠とはいえ、タイプによって性能も少しずつ異なります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
1.ディスクシリンダー錠(ウェーハータンブラー錠)
日本の住宅の多くで、ディスクシリンダーが使用されていると言われています。このディスクシリンダー錠は普及当時は爆発的に広まったものですが、現在のピッキング犯からすれば‟おもちゃ”とも呼べるほど簡単に開けてしまうことができるタイプです。
当時の普及率の高さから、ピッキング横行以前のものを使い続けているところも多く、防犯の観点では交換が望ましいところです。一般的によく目にするシンプルなタイプと言えます。
ディスクシリンダー錠のタンブラーは穴の空いた皿のような形をしています。時間が経つにつれて鍵がすり減ったり、チリやホコリなどが入ったりしても使い続けることができますが、鍵穴に負担がかかる場合もあります。劣化を感じた場合は新しい鍵を使用するのではなく、鍵そのものを交換してしまいましょう。
〈主に使用されているもの〉
・住宅(戸建て、マンション)
2.ピンタンブラー錠(ピンシリンダー錠)
このピンタンブラー錠も現在の戸建てやマンションでよく使用されている鍵のタイプの一つです。一列に並んだタンブラーの形がピン状になっているため、こう呼ばれています。鍵の刻みが一方向にしかないのが特徴です。こちらも一般的によく目にするタイプです。
現在量産されているのは、主にピンの形状によってピッキングされにくく改良したものですが、やはり防犯性は低めです。現状の鍵かピンタンブラー錠であれば、防犯性の高い鍵に交換したり、補助錠を使用することをおススメします。
〈主に使用されているもの〉
・住宅(戸建て、マンション)
・机の引き出し
・ロッカー など
3.ディンプルシリンダー錠
ディンプルキーとも呼ばれる、ピンシリンダーがより複雑化したタイプです。ピンが複数方向から刺さっていて、本数も多いため、ピンタンブラー錠より格段にピッキングに強くなっています。鍵の表面にデコボコとしたくぼみがあるのが特徴です。鍵に表裏がないものもあります。比較的新しい戸建てやマンションに使用されています。先の2本とは形状が異なり、鍵先は丸いものが多く見られます。
メジャーなものでは、ゴール社のV18シリーズや、KABA社のKaba star neoシリーズがあります。防犯性は先の2タイプよりもぐっと高くなります。中には質の低いディンプルキーも存在しますので、なるべく大手メーカーのディンプルキーを使用するようにしましょう。今のところ防犯性は高いですが、今後、鍵の進化とともに、このディンプルキーもピッキングされないという保障はありません。
〈主に使用されているもの〉
・住宅(戸建て、マンション)
4.マグネットタンブラーシリンダー錠
マグネットキーは、鍵の側面にマグネットを埋め込んだものです。鍵表面にも磁石が入っていて、タンブラーと鍵表面の磁石がすべて反発しあうことで、内筒が回転する仕組みの鍵です。S極とN極の配列が一つでも合わないと回転しないため、防犯性が高いです。
タンブラーを鍵穴内に露出させる必要がなく、鍵穴にピックを差し込んでも磁石のタンブラーを操作することができないので、普通のピックを使用したピッキングは100%不可能です。形状はディンプルシリンダー錠に似ていますが、表面の鍵穴が極端に少ないタイプもあります。
このマグネットタンブラーとピンタンブラーを組み合わせた鍵もありますが、マグネットの磁力が弱まってしまったり、鍵からマグネット自体が脱落しまうと鍵が開けられないという可能性もあります。
〈主に使用されているもの〉
・住宅(戸建て、マンション)
・スーツケース
・バイクのシャッターキー
・コインロッカー など
5.ロータリーディスクタンブラー錠
ディスクシリンダー錠の後継として開発された防犯性の高い鍵。外筒と内筒とを貫く部品(ロッキングバー)とタンブラーが別々になっており、タンブラーは中間部品のような役割を果たしています。正しい鍵を入れると、タンブラーの切欠きがロッキングバーと合致し、内筒におさまって鍵を開けることができる仕組みです。代表的なもので言えば、美和ロック社製の、U9、PR、PR-Jシリーズなどがあります。
現在の日本では、住宅以外にはほとんど使用されている事がないのが特徴。見た面はディスクシリンダーキーと良く似ていますが、防犯性が高く、スペアキーを作る際などは正確にコピーしないと使用できず、鍵が抜けなくなってしまうなどのトラブルも発生する場合があります。合鍵を作る際は注意しましょう。
〈主に使用されているもの〉
・住宅
南京錠や小物鍵~雑貨等に使用されている鍵
ウォード錠
鍵の内部にウォードと呼ばれる障害があり、正規の鍵はその障害に当たらずに回転できるような形状になっています。この鍵の歴史は古く、古代ローマにその原型が作られとされています。
ウォードキーは原理が単純なため、現代では住宅や建物に使用されることはほとんどありませんが、カバンや南京錠などの鍵として使用されています。また、華美な装飾が施されているものもあり、見た目がオシャレなものが多いです。アンティーク小物や古いドレッサー、柱時計などの鍵としても愛用されています。
〈主に使用されているもの〉
・アンティーク製品
・南京錠
・カバン
レバータンブラー錠
板状のタンブラーを使用している錠前で、てこのように動かして開錠します。形状はウォードキーに似ています。レバータンブラーにはH型の溝(ツク)があり、鍵を回転させることで、かんぬきについた突起がツクの中を動き、開錠できるという仕組みです。
鍵穴が前方後円墳のような形をしていて、アクセサリーのモチーフに使われるような棒状の鍵です。
現在も使用されていますが、割と古いタイプの鍵なので、住宅の鍵として単体で使用することはオススメできません。防犯性を考えると、交換か補助錠の使用が望ましいです。
〈主に使用されているもの〉
・古い住宅(戸建て)、倉庫
・古い自動ドア
・南京錠
・机の引き出し
南京錠
鍵本体が取り外し可能で持ち運びができる小さな錠前です。ハンドバッグのような形状で、可動式の掛け金がついていて、3cmくらいの小さなものから10cm超えのものがあります。開錠に鍵を必要とするものと、ダイヤル式になっているものがあります。
古代の中国はじめ、アジアで使用されていた古い歴史があります。扱いやすく、力ずくによる犯罪をある程度防ぐことが出来るため、身近な鍵の一つとして普及しています。鍵本体はシンプルで扱いやすいですが、鍵自体は小さいのでなくさないような工夫が必要です。
〈主に使用されているもの〉
・ロッカー
・公共施設の門扉
・カバン
・金庫
クレセント錠
アルミサッシの窓などの、室内側に取り付けられている鍵(締め金具)です。回転させる部分が半円形であることから、クレセント(三日月)と呼ばれています。形状も性能もシンプルで、複雑なクレセント錠は少ないです。
もともと防音などのために窓ガラスの密閉度を高める目的の鍵のため、防犯性などは考慮されていませんでした。そのため、鍵の近くのガラスを割ったり穴をあけたりして、手を差し込んで鍵を開けるという空き巣の侵入手口が多く発生しています。
現在ではクレセントに鍵がついて回らないようにロックできるものや、窓枠に補助錠を取り付けることなどで鍵を二重にする防犯性も高まってきています。ホームセンターなどで、多くのクレセント錠用の補助錠が販売されています。
〈主に使用されているもの〉
・窓
デジタルキー~電子的に施錠する最新のシステム
暗証番号錠
ボタンやテンキーで暗証番号を入力することで開錠します。鍵を持ち歩かなくてよいことがメリットで、最近の住宅でも使用されることが増えてきています。暗証番号錠には機械式と電気式があり、電気式の場合には交流電源を使うものと、バッテリーで動くものとがあります。形状は様々で、タッチパネル操作ができるタイプや、カバーを開けてボタンを押すタイプ、ボタンを押してからダイヤルを回すタイプなど種類が豊富です。住まいの扉などはドアの取っ手付近に取り付けられていることが多いです。
暗証番号が正しければ誰にでも開けられるので、鍵を紛失したり、落としたり、複製したりなどの手間や不安がありません。ただし、暗証番号を忘れるともちろん鍵は開けられないので注意が必要です。また、誰かに手元を見られていたり、暗証番号をメモしていた物を落としてしまったりした場合は暗証番号を速やかに変更しましょう。
〈主に使用されているもの〉
・住宅(戸建て、マンション)
・公共施設
・番号式南京錠
・ロッカー など
カード錠
カードが鍵になっているものです。カードの形も鍵のしくみもさまざまで、磁気層を埋め込んだドッグタグのようなカードを差し込んでシリンダーを回転させるものや、ICカードをかざしたり挿入したりすることで開錠する電気式のものなどがあります。Suicaなど手持ちの電子マネーカードを登録し、鍵として使うことも可能です。
ピッキングなどの被害にあいにくく、防犯性も高いです。最近では、積極的にカードキーを導入している賃貸物件も増えてきています。カードタイプなので、定期入れやカードケースに入れて出し入れできるのが便利ですが、落としやすい危険性もあります。カードが折れてしまったり欠けてしまったりすると、使えなくなるものもあるので注意が必要です。
〈主に使用されているもの〉
・住宅(戸建て、マンション)
・オフィスビル
・ホテル
・ロッカー
生体認証錠(バイオメトリックス錠)
指紋や静脈、顔などによって個人を特定し、開錠します。鍵を持ち歩かなくてよいメリットがあり、防犯性は非常に高いですが、他のものと比べて高額です。個人を特定することができるので、入退室の管理をするのにも適しています。
銀行など高度なセキュリティが必要な施設などでは虹彩認証なども使用されていますが、一般的な鍵としては高額すぎて使用が現実的ではありません。しかし、比較的取り入れやすくなった指紋認証錠などは、一般家庭でも少しずつ普及し始めています。ほとんどの指紋認証錠はオートロック機能がついているので、忙しい時の施錠の煩わしさや、閉め忘れなどの心配がないメリットがあります。
〈主に使用されているもの〉
・住宅(戸建て、マンション)
・オフィスビル
・スマートフォン
リモコンキー(リモートキー)、スマートキー
最近の車のほとんどはリモコンキー、スマートキーと呼ばれるキーレスタイプの鍵です。リモコンキーは鍵のヘッド部分に自動開閉ボタンがついているもので、鍵を差し込まなくても車の施錠ができるタイプです。ヘッドの下は通常の鍵になっているので、鍵を差し込んでの施錠も可能です。
スマートキーは小さなコントロールキーに自動開閉ボタンがついており、ボタンを押すことで施錠が可能です。また、スマートキーさえ所持していれば、車に近づいて車のドアの取っ手部分のボタンを押すだけで開錠が可能です。カバンの奥底からわざわざスマートキーを取り出してボタンを押さなくても、スムーズに開錠できるのが特徴です。
リモコンキーは電池タイプが多いので電池交換の必要があります。ボタン電池がほとんどなので、自力で交換することも可能です。
〈主に使用されているもの〉
・車
・倉庫(シャッター)
・物置(シャッター)
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