家庭菜園でブロッコリーを育てていると、朝見たら葉がレース状に食べられていた、という経験はありませんか?せっかく丹精込めて育てたブロッコリーが、収穫前に害虫の被害で全滅してしまうのは本当に悔しいものです。特に子供に安全な野菜を食べさせたいと無農薬栽培に挑戦している方にとって、害虫対策は最大の課題です。
本記事では、ブロッコリーに発生する主要な害虫4種類の見分け方から、防虫ネットや天然スプレー、コンパニオンプランツを活用した無農薬での予防・駆除方法まで、家庭菜園で今すぐ実践できる対策を完全解説します。
農林水産省のデータによると、日本の有機農業面積は2022年時点で0.7%ですが、2050年までに25%を目標としており、無農薬栽培への関心は年々高まっています。この記事を読めば、初心者でも無農薬でブロッコリーを収穫できるようになります。
ブロッコリーに発生する主な害虫4種類と見分け方

ブロッコリー栽培で最も重要なのは、害虫の種類を正しく見分けることです。害虫ごとに活動時間や食害パターンが異なるため、適切な対策を講じるには敵を知ることが不可欠です。
ここでは家庭菜園で特に被害が多い4種類の害虫について、その特徴と見分け方を詳しく解説します。
アオムシ(モンシロチョウの幼虫)の特徴と被害
アオムシはモンシロチョウの幼虫で、ブロッコリー栽培で最も遭遇する害虫です。体長は2〜3cmで鮮やかな緑色をしており、葉の表面を大きく食害します。
春から秋にかけて発生し、特に3〜5月と9〜10月に被害が集中します。
アオムシの最大の特徴は、葉を外側から内側に向かって大きく食べることです。1匹でも放置すると1日で葉を数枚食べ尽くすほどの食欲があります。
卵は葉の裏に1個ずつ産み付けられ、黄色い米粒状で発見しやすいのが特徴です。昼間に活動するため、日中の観察で比較的容易に発見できます。
被害が進むと葉脈だけが残り、光合成ができなくなって株全体が弱ります。特に若い苗の時期に被害を受けると、その後の生育に大きな影響が出るため、早期発見・早期駆除が重要です。
ヨトウムシ(夜盗虫)の特徴と被害
ヨトウムシは夜行性の害虫で、昼間は土の中に潜み、夜間に地上に出てきて葉を食害します。体長は3〜5cmで、灰褐色から黒褐色をしており、アオムシよりも太くて硬い体をしています。
6〜8月の高温期に特に多発します。
ヨトウムシの厄介な点は、昼間は姿を見せないため犯人の特定が難しいことです。朝起きたら葉が大きく食べられているのに虫が見当たらない場合は、ヨトウムシの仕業である可能性が高いです。
株元の土を軽く掘ると、丸まって隠れている個体を発見できることがあります。
被害は葉だけでなく、花蕾(つぼみ)にも及ぶため、収穫直前に大きな損失を被ることがあります。1匹の食害量がアオムシよりも多く、放置すると株が全滅する危険性があります。
夜間に懐中電灯で照らして捕獲するのが最も効果的な駆除方法です。
アブラムシの特徴と被害
アブラムシは体長2〜3mmの小型害虫で、緑色や黒色の個体が存在します。新芽や葉の裏に大量に群がり、植物の汁を吸って生育を阻害します。
繁殖力が非常に高く、気温が20〜25℃の春と秋に爆発的に増殖します。
アブラムシの被害は直接的な吸汁だけではありません。排泄物(甘露)がすす病の原因となり、葉が黒く汚れて光合成が妨げられます。
また、ウイルス病を媒介するため、一度発生すると周辺の作物にも被害が広がる危険性があります。
初期段階では数匹程度ですが、放置すると1週間で数百匹に増殖します。新芽の生長点に集中して寄生するため、株の生育が著しく悪化します。早期発見と定期的な観察が被害を最小限に抑える鍵となります。
コナガの特徴と被害
コナガは体長7〜10mmの小型の蛾の幼虫で、淡緑色をしています。葉の裏側から食害し、表皮を残して葉肉だけを食べるため、葉が白く透けて見えるのが特徴です。
年間を通して発生しますが、特に秋の涼しい時期に多発します。
コナガの最大の問題点は、農薬に対する抵抗性が非常に強いことです。多くの化学農薬が効かなくなっており、プロの農家でも防除に苦労する難敵です。
そのため、無農薬栽培では防虫ネットによる物理的防除が最も効果的な対策となります。
被害が進むと葉全体が白く変色し、光合成能力が低下します。幼虫は非常に小さく動きも素早いため、発見が遅れがちです。
卵は葉の裏に産み付けられ、孵化までの期間が短いため、一度発生すると急速に被害が拡大します。定期的な葉裏チェックが予防の基本です。
無農薬でブロッコリーの害虫を予防する3つの基本戦略

無農薬栽培で最も重要なのは、害虫を「駆除する」よりも「予防する」ことです。害虫が大量発生してからでは対処が困難になるため、栽培開始時から予防策を徹底することが成功の鍵となります。
ここでは、家庭菜園で実践できる3つの基本的な予防戦略を紹介します。
防虫ネットの正しい設置方法とタイミング
防虫ネットは無農薬栽培における最も効果的な予防手段です。農業試験場のデータによると、適切に設置された防虫ネットは害虫被害を約80%削減できることが実証されています。
成虫の侵入を物理的に防ぐため、卵を産み付けられる心配がありません。
設置のタイミングは定植直後が最適です。苗を植え付けたら、害虫が飛来する前にすぐにネットで覆います。
目合いは1mm以下が理想的で、モンシロチョウやコナガの成虫を確実に遮断できます。さらに小さな害虫(アブラムシ)も防ぎたい場合は、0.4mm目合いのネットを選びましょう。
設置時の重要なポイントは、隙間を作らないことです。ネットの裾は土で埋めるか、レンガやブロックで押さえて完全に密閉します。
支柱を立ててネットをかぶせ、ブロッコリーが成長しても窮屈にならないよう高さに余裕を持たせます。成長に合わせて支柱を高くするか、ネットを2枚重ねて拡張する方法もあります。
収穫まで外さないのが基本ですが、追肥や観察の際は最小限の時間で作業を終え、すぐに閉じましょう。
適切な施肥管理で害虫を寄せ付けない
肥料の与え方が害虫の発生に大きく影響することは、あまり知られていません。特に窒素肥料の過剰施用は、植物体内のアミノ酸濃度を高め、害虫にとって非常に美味しい状態を作り出してしまいます。
これが「肥料過多が害虫を呼ぶ」メカニズムです。
ブロッコリー栽培では、元肥として完熟堆肥を中心に施し、化学肥料は控えめにするのが基本です。追肥も最小限に抑え、株の様子を見ながら必要に応じて与える程度にとどめます。
葉色が濃すぎる場合は窒素過多のサインなので、追肥を控えましょう。
農学博士の木嶋利男先生の研究によると、肥料を控えめにした株は害虫の被害が少なく、病気にも強くなることが確認されています。「少し物足りないかな」と思う程度の施肥が、結果的に健全な株を育て、害虫被害を減らすことにつながります。
コンパニオンプランツで害虫を自然に遠ざける
コンパニオンプランツとは、一緒に植えることで互いに良い影響を与え合う植物の組み合わせです。ブロッコリーの場合、キク科植物やマメ科植物との混植が害虫忌避に効果的であることが科学的に証明されています。
キク科植物(レタス、春菊、マリーゴールド)は、アレロパシーという化学物質を根や葉から放出し、モンシロチョウやコナガの飛来を抑制します。
ブロッコリーの株間や周囲にレタスや春菊を植えることで、害虫が寄り付きにくい環境を作れます。実際、カジトラの読者報告では、サニーレタスとの混植でアオムシの発生が前年の半分以下になったという事例があります。
マメ科植物(ソラマメ、エンドウ)は、アブラムシの天敵であるテントウムシやヒラタアブを誘引する効果があります。
また、マメ科植物は根粒菌により窒素を固定するため、土壌を豊かにする副次的なメリットもあります。ブロッコリーの畝の端にマメ科植物を配置することで、総合的な害虫管理システムが構築できます。
ブロッコリーの害虫を無農薬で駆除する実践方法

予防策を講じても、完全に害虫を防ぐことは困難です。特に防虫ネットを設置していない場合や、設置前に侵入された場合は、早期発見と適切な駆除が必要になります。
ここでは、無農薬で実践できる具体的な駆除方法を4つ紹介します。
手作業での捕殺|効果的なタイミングと道具
手作業での捕殺は、最も確実で環境に優しい駆除方法です。アオムシやヨトウムシなど、比較的大きな害虫に対して非常に効果的です。
毎日の観察を習慣化し、発見次第すぐに駆除することで、大量発生を防げます。
捕殺に使う道具は、箸やピンセットが便利です。素手で触るのに抵抗がある方は、使い捨て手袋を着用しましょう。
捕獲した害虫は、洗剤を溶かした水を入れたバケツに入れると確実に駆除できます。地面に捨てるだけでは再び株に戻ってくる可能性があるため、必ず水没させます。
効果的なタイミングは、アオムシなど昼行性の害虫は早朝か夕方、ヨトウムシは夜間です。卵の段階で発見できれば、孵化前に取り除くことで被害を未然に防げます。
葉の裏側を重点的にチェックし、黄色い卵や小さな幼虫を見逃さないようにしましょう。シェア畑の利用者の体験談では、毎日の観察で卵や若齢幼虫の段階で駆除を徹底することで、無農薬栽培に成功した事例が多数報告されています。
天然スプレーの作り方|酢・木酢液・ニームオイル
天然スプレーは、化学農薬を使わずに害虫を忌避・駆除できる方法です。効果は化学農薬ほど強力ではありませんが、定期的に使用することで一定の効果が期待できます。
特にアブラムシなど小型の害虫に有効です。
酢スプレーは最も手軽に作れます。食酢を水で10〜20倍に薄め、スプレーボトルに入れて葉の表裏に散布します。
酢の酸性がアブラムシの体表を傷つけ、駆除効果を発揮します。ただし、濃度が高すぎると植物にもダメージを与えるため、必ず希釈して使用します。週2〜3回の散布が目安です。
木酢液は300〜1000倍に希釈して使用します。木酢液には害虫忌避効果があり、定期的な散布で害虫の飛来を減らせます。
ただし、効果の持続期間は5〜7日程度なので、週1回の散布が必要です。価格は1リットルで500〜1500円程度です。
ニームオイルは500〜1000倍に希釈し、展着剤として少量の石鹸を加えて使用します。ニームに含まれるアザディラクチンという成分が、害虫の摂食や脱皮を阻害します。
価格は100mlで1000〜3000円とやや高価ですが、効果は比較的高いとされています。こちらも週1回の散布が推奨されます。
天敵を活用した生物的防除|テントウムシとクモ
生物的防除とは、害虫の天敵となる生物を利用して害虫を抑制する方法です。化学物質を一切使わないため、環境に最も優しい防除法と言えます。
家庭菜園では、テントウムシとクモが主要な天敵として活躍します。
テントウムシはアブラムシの天敵として有名です。成虫も幼虫も1日に数十匹のアブラムシを捕食します。
テントウムシを畑に呼び込むには、マメ科植物や花を植えて生息環境を整えることが重要です。殺虫剤を使用しないことも、天敵を保護する上で不可欠です。
クモは多くの害虫を捕食する汎用性の高い天敵です。特にコモリグモやハシリグモは地表を徘徊し、ヨトウムシやコナガの幼虫を捕食します。
クモの巣を見つけても取り除かず、そのまま残しておくことで自然な害虫管理システムが機能します。
天敵を活用するには、畑の生物多様性を高めることが重要です。単一作物だけでなく、多様な植物を混植し、天敵が住みやすい環境を作りましょう。
農薬を使わないことで、天敵が定着しやすくなり、長期的に害虫被害が減少します。
夜行性害虫(ヨトウムシ)の駆除テクニック
ヨトウムシは昼間は土中に潜むため、通常の観察では発見できません。夜間に活動する習性を逆手に取った駆除テクニックが効果的です。
夜間に懐中電灯やヘッドライトを持って畑を見回り、葉を食べている個体を発見次第捕殺します。
夜間捕獲の最適な時間帯は、日没後1〜2時間です。この時間帯にヨトウムシは土から出てきて活発に摂食します。
株元の土を軽く掘ると、隠れている個体を発見できることもあります。見つけた個体は箸やピンセットで捕まえ、洗剤水に投入して駆除します。
昼間の対策としては、株元の土を軽く耕すことで隠れ場所を減らす方法があります。また、マルチングを行うことで、土中への潜り込みを物理的に妨げることができます。
ただし、完全な駆除は難しいため、夜間捕獲と組み合わせた総合的な対策が必要です。
コンパニオンプランツを活用した害虫対策

コンパニオンプランツは、単なる民間療法ではなく、科学的根拠に基づいた害虫管理手法です。農学博士の木嶋利男先生の研究により、特定の植物の組み合わせが害虫忌避効果を持つことが実証されています。
ここでは、ブロッコリーと相性の良いコンパニオンプランツを詳しく解説します。
キク科植物(レタス・春菊)のアレロパシー効果
キク科植物は、アレロパシーと呼ばれる化学的作用で害虫を忌避します。アレロパシーとは、植物が根や葉から特定の化学物質(アレロケミカル)を放出し、周囲の生物に影響を与える現象です。
レタスや春菊が放出する物質は、モンシロチョウやコナガの成虫が嫌う匂いを持ちます。
レタス(特にサニーレタス)をブロッコリーの株間に植えることで、モンシロチョウの飛来が明らかに減少します。
カジトラの読者報告では、混植した畑ではアオムシの発生が前年の半分以下になったという実例があります。レタスは栽培期間も短く、ブロッコリーと収穫時期をずらせるため、管理も容易です。
春菊も同様の効果があり、さらに独特の香りが多くの害虫を遠ざけます。春菊は耐寒性が強く、秋冬のブロッコリー栽培に最適なコンパニオンプランツです。
ブロッコリーの畝の両脇に春菊を植えることで、害虫バリアを形成できます。
マメ科植物(ソラマメ・エンドウ)との混植メリット
マメ科植物は、アブラムシの天敵を誘引する効果があります。ソラマメやエンドウには少量のアブラムシが付きますが、これが逆にテントウムシやヒラタアブを呼び寄せる餌となります。
天敵が定着すると、ブロッコリーに発生したアブラムシも捕食してくれます。
マメ科植物のもう一つのメリットは、根粒菌による窒素固定です。マメ科植物の根には根粒菌が共生し、空気中の窒素を植物が利用できる形に変換します。
これにより、化学肥料の使用量を減らせ、結果的に害虫を呼び寄せにくい環境が作れます。
ソラマメは秋に種をまき、翌春に収穫します。ブロッコリーと栽培時期が重なるため、秋植えブロッコリーとの混植に最適です。
エンドウも同様で、つるなしタイプを選べば管理が簡単です。マメ科植物は収穫後、株を抜かずに根を土に残すことで、窒素肥料として活用できます。
効果的な配置方法と植え付けのコツ
コンパニオンプランツの効果を最大化するには、配置方法が重要です。基本的な配置パターンは、ブロッコリーの株間や畝の両脇にコンパニオンプランツを植える方法です。
株間は30〜40cm確保し、その間にレタスや春菊を植えます。
畝の配置は、中央にブロッコリーを1列、両脇にレタスや春菊を1列ずつ植える「3列配置」が効果的です。この配置により、ブロッコリーが常にコンパニオンプランツに囲まれた状態になり、害虫の飛来を最小限に抑えられます。
マメ科植物は畝の端に配置し、天敵の供給源とします。
植え付けのタイミングは、ブロッコリーと同時か、ブロッコリーの定植1〜2週間後が理想的です。コンパニオンプランツが先に根を張ることで、アレロパシー効果が早期に発揮されます。
また、コンパニオンプランツが成長しすぎてブロッコリーの日照を妨げないよう、適宜間引きや収穫を行います。水やりや追肥はブロッコリーに合わせて行い、過度な施肥は避けましょう。
害虫の種類別|無農薬駆除の具体的手順

害虫の種類ごとに最適な駆除方法は異なります。それぞれの害虫の習性や弱点を理解し、効果的な手順で駆除することが成功の鍵です。
ここでは、主要4種類の害虫について、発見から駆除までの具体的な手順を解説します。
アオムシの駆除|卵の発見から捕殺まで
アオムシ駆除の第一歩は、卵の段階での発見です。モンシロチョウは葉の裏に1個ずつ卵を産み付けます。
卵は黄色い米粒状で、長さ1mm程度です。毎朝の観察で葉裏をチェックし、卵を見つけたら葉ごと取り除くか、指で潰します。この段階で駆除できれば、孵化による被害を完全に防げます。
孵化後の若齢幼虫(体長5mm以下)は、葉の裏側に隠れていることが多いです。小さな食害痕を見つけたら、その周辺の葉裏を重点的に探します。
若齢幼虫は動きが遅く、箸やピンセットで簡単に捕獲できます。この時期の駆除が最も効率的で、1匹あたりの被害も最小限に抑えられます。
中齢〜老齢幼虫(体長1〜3cm)になると、葉の表面で堂々と摂食するようになります。緑色で目立つため発見は容易ですが、食害量が多いため早急な駆除が必要です。
箸で挟んで捕獲し、洗剤水に投入します。1日2回(朝夕)の観察を習慣化することで、大量発生を防げます。
ヨトウムシの駆除|昼間の捕獲と夜間対策
ヨトウムシは夜行性のため、昼間の駆除は困難です。しかし、若齢幼虫の段階では昼間も葉の裏にいることがあります。
葉が食べられているのに虫が見当たらない場合は、葉の裏や株元の土を軽く掘ってみましょう。丸まって隠れている個体を発見できることがあります。
効果的なのは夜間捕獲です。日没後1〜2時間が最も活動的な時間帯で、懐中電灯やヘッドライトを持って畑を見回ります。
葉を食べている個体を発見したら、箸やピンセットで捕獲します。ヨトウムシは動きが鈍いため、夜間であれば比較的容易に捕まえられます。
予防策としては、株元にマルチングを施すことで土中への潜り込みを防ぐ方法があります。また、株元の土を定期的に軽く耕すことで、隠れ場所を減らせます。
ただし、完全な防除は難しいため、夜間捕獲を週2〜3回実施することが推奨されます。
アブラムシの駆除|水流と天然スプレー
アブラムシは初期段階であれば、水流だけで駆除できます。ホースやジョウロで強めの水を葉の裏に吹きかけ、アブラムシを洗い流します。
アブラムシは一度落ちると再び株に戻ることが難しいため、この方法でも十分な効果があります。ただし、水圧が強すぎると葉を傷めるため注意が必要です。
大量発生した場合は、天然スプレーが有効です。酢スプレー(10〜20倍希釈)を葉の表裏に散布します。
酢の酸性がアブラムシの体表を傷つけ、駆除効果を発揮します。週2〜3回の散布を継続することで、個体数を減らせます。ただし、濃度が高すぎると植物にもダメージを与えるため、必ず希釈して使用します。
天敵の活用も効果的です。テントウムシやヒラタアブの幼虫は1日に数十匹のアブラムシを捕食します。
マメ科植物を近くに植えて天敵を誘引し、自然な防除システムを構築しましょう。天敵が定着すれば、長期的にアブラムシの被害を抑制できます。
コナガの駆除|防虫ネットと早期発見
コナガは農薬抵抗性が非常に強く、化学農薬でも駆除が困難な害虫です。そのため、無農薬栽培では防虫ネットによる物理的防除が最も効果的です。
目合い1mm以下のネットを定植直後から設置し、成虫の侵入を完全に遮断します。
防虫ネットを設置していない場合や、設置前に侵入された場合は、早期発見が重要です。コナガの幼虫は葉の裏側から食害し、表皮を残して葉肉だけを食べます。
葉が白く透けて見えたら、葉裏を重点的にチェックします。淡緑色の小さな幼虫を見つけたら、すぐに捕殺します。
コナガの卵は葉の裏に産み付けられ、非常に小さいため発見が困難です。しかし、孵化までの期間が短いため、毎日の観察で若齢幼虫の段階で駆除することが重要です。
BT剤(バチルス・チューリンゲンシス)は有機栽培でも使用可能な生物農薬ですが、効果は限定的です。やはり防虫ネットと手作業駆除の組み合わせが最も確実な方法です。
ブロッコリーの無農薬栽培で失敗しないための注意点

無農薬栽培で失敗する原因の多くは、基本的な栽培管理のミスにあります。害虫対策だけでなく、肥料管理や日常の観察、防虫ネットの維持管理など、総合的なアプローチが成功の鍵です。
ここでは、よくある失敗パターンとその対策を解説します。
肥料過多が害虫を呼ぶメカニズム
窒素肥料を過剰に与えると、植物体内のアミノ酸濃度が高まります。害虫は植物の汁を吸ったり葉を食べたりする際、アミノ酸を栄養源としています。
窒素過多の植物は害虫にとって非常に美味しく、飛来や産卵を促進してしまうのです。
特に化学肥料の速効性窒素は、急激に植物体内の窒素濃度を上げるため危険です。有機肥料であっても、未熟堆肥や鶏糞など窒素成分の多いものを大量に施すと同様の問題が起こります。
ブロッコリー栽培では、完熟堆肥を中心に施し、化学肥料は最小限に抑えることが基本です。
適切な施肥量の目安は、元肥として完熟堆肥2〜3kg/㎡、化成肥料50〜80g/㎡程度です。追肥は株の様子を見ながら判断し、葉色が濃すぎる場合は控えます。
「少し物足りないかな」と思う程度の施肥が、結果的に健全な株を育て、害虫被害を減らします。木嶋利男先生の研究でも、肥料を控えめにした株は害虫の被害が少なく、病気にも強いことが確認されています。
防虫ネットの隙間チェックポイント
防虫ネットは正しく設置しないと、わずかな隙間から害虫が侵入します。特にモンシロチョウやコナガの成虫は、数ミリの隙間でも通り抜けることができます。
設置時だけでなく、定期的な点検が不可欠です。
最も隙間ができやすいのは、ネットの裾部分です。土で埋めたつもりでも、風や雨で土が流れて隙間が生じることがあります。
週に1回は畝の周囲を歩いて、裾が浮いていないか確認しましょう。隙間を見つけたら、すぐに土を盛るかブロックで押さえます。
支柱とネットの接続部分も要注意です。洗濯バサミや専用クリップで固定しますが、強風で外れることがあります。
台風や強風の後は必ずチェックし、外れている箇所を修正します。また、ブロッコリーが成長してネットが窮屈になると、葉がネットに触れて破れることがあります。
破れた箇所は補修テープで塞ぐか、新しいネットに張り替えます。成長に合わせて支柱を高くするか、ネットを2枚重ねて拡張する方法も有効です。
毎日の観察で早期発見する方法
無農薬栽培の成功は、毎日の観察にかかっています。害虫は卵から孵化後、急速に成長し食害量が増えます。若齢幼虫の段階で発見・駆除できれば、被害を最小限に抑えられます。
逆に、数日放置すると大量発生し、手に負えなくなります。
観察のポイントは、葉の裏側と新芽です。多くの害虫は葉の裏に卵を産み、若齢幼虫も裏側に隠れています。
葉を1枚1枚めくって裏側をチェックする習慣をつけましょう。新芽はアブラムシが集中する場所なので、重点的に観察します。食害痕を見つけたら、その周辺を詳しく調べ、犯人を特定します。
観察の時間帯は、早朝か夕方が理想的です。朝は害虫の活動が活発で、夜間に食害した痕跡も新鮮です。夕方は1日の被害状況を確認できます。
観察は5〜10分程度で十分ですが、毎日継続することが重要です。シェア畑の利用者の体験談では、毎日の観察で卵や若齢幼虫の段階で駆除を徹底することで、無農薬栽培に成功した事例が多数報告されています。
よくある質問|ブロッコリーの無農薬害虫駆除

- 防虫ネットだけで完全に害虫を防げますか?
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防虫ネットは約80%の害虫被害を削減できますが、完全ではありません。設置前に侵入した害虫や、隙間からの侵入リスクがあるため、定期的な観察と手作業駆除の併用が必要です。
- 木酢液やニームオイルは本当に効果がありますか?
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木酢液やニームオイルは一定の忌避効果がありますが、化学農薬ほど強力ではありません。週1回の定期散布と、他の対策との組み合わせで効果を発揮します。効果持続期間は5〜7日程度です。
- 無農薬栽培は初心者でも成功できますか?
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防虫ネットの設置と毎日の観察を徹底すれば、初心者でも成功可能です。失敗の多くは肥料過多や観察不足が原因なので、基本を守れば立派なブロッコリーを収穫できます。
まとめ
ブロッコリーの無農薬害虫駆除は、予防と早期発見・早期駆除の組み合わせが成功の鍵です。防虫ネット(目合い1mm以下)を定植直後から設置し、隙間なく覆うことで害虫被害を約80%削減できます。
肥料は控えめにし、特に窒素過多を避けることで害虫を寄せ付けにくい環境を作れます。
コンパニオンプランツ(レタス、春菊、ソラマメ)との混植は、アレロパシー効果や天敵誘引により自然な害虫管理を実現します。
発生した害虫は、手作業での捕殺、天然スプレー(酢、木酢液、ニームオイル)、天敵の活用で対処します。特にヨトウムシは夜間捕獲が効果的です。
毎日の観察で卵や若齢幼虫の段階で発見・駆除することが最も重要です。農林水産省のデータによると、日本の有機農業面積は2022年時点で0.7%ですが、2050年までに25%を目標としています。
無農薬栽培への関心は高まっており、正しい知識と実践で誰でも成功できます。子供に安全な野菜を食べさせたい、環境に優しい農法を実践したいという願いは、適切な害虫対策で実現可能です。
今日から実践して、立派なブロッコリーを収穫しましょう。
