蜂の被害状況

巣作りが最盛期となる夏には、駆除業者・国の自治体・ボランティアに持ち込まれる蜂の被害の相談が、地域によっては月に1000件を超えることがあります。(参照:蜂の出やすい季節
更に、蜂に刺されることで起こる死亡事故の件数は、毒蛇や熊による被害を毎年、遥かに上回る数が報告されています。

この項目ではそれら、実際に起こった蜂による被害とその件数・死亡事故について、まとめていきます。

蜂の刺害事故は年間数千件にのぼる

スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチによる刺害事故の件数は、全種類・全自治体をあわせると、年間で数千件にものぼるといわれています。

特に最盛期となる夏には、スズメバチ・アシナガバチは一層精力的に動き回るようになり、攻撃性も非常に強くなっていきます。この夏の時期に、蜂による事故件数は集中します。猛暑で気温が高い年には個体数も増え、よりその危険性は高まります。

神奈川県の自治体調査によると、ある猛暑の年に、半年足らずの蜂の活動期間中に、多いところではひとつの自治体だけで30件以上、蜂による被害によって救急車が出動する事態が引き起こされています。

刺害事故増加の原因はスズメバチ/キイロスズメバチ・コガタスズメバチが都市に適応

増加する蜂被害の大半は、スズメバチによるものです。特に、キイロスズメバチ・コガタスズメバチといった種類の蜂が多くの場合、刺害事故を引き起こします。

キイロスズメバチは最も小さく、最も凶暴なスズメバチです。ひとつの群れが抱える個体数がスズメバチの中でも最も多く、数が増え巣が手狭になると引っ越しを行う習性を持っています。
一方のコガタスズメバチは、オオスズメバチとそっくりな外見をしている蜂です。樹木や建物に巣をつくり、釘などの突起物を利用して巣をかけるケースも見られます。

近年、蜂による被害が増加傾向にあるのは、これらのスズメバチが都会に適応し、人の生活圏近くに多く巣をつくるようになってきたことが大きな原因です。

これらの蜂にはいくつか共通点があり、どちらも、

  • ・民家に巣をつくることができる
    キイロスズメバチ:屋根裏にも軒先にも営巣可能
    コガタスズメバチ:軒先に巣をつくる
  • ・場所を選ばずに巣をつくることができる
    キイロスズメバチ:状況に応じて巣を引っ越すことがある
    コガタスズメバチ:さまざまな種類の木に営巣可能
  • ・餌となる虫の種類が限定されない
    虫の絶対数が少ない都会においても餌に困らない

といった、都市部での生活に適した性質を持っています。
このため、蜂の被害が都市部で起こる場合、その多くはスズメバチによるものとなってしまうのです。

スズメバチ以外では、小さな庭にも巣をつくることの多いアシナガバチも注意すべき蜂です。スズメバチに比べると性質もずっとおとなしく、毒も弱い蜂ですが、刺された場合にアナフィラキシーショックの危険性がある点では変わりありません。

蜂被害による死亡事故/毎年20人が死亡、10人以下となった年はない

また、単純な被害件数が増えているばかりでなく、毎年20人前後の人がスズメバチによる刺害事故によって死亡しています。
最多の死者数であった1984年(73人)に比べると大きく減少していますが、最も少ない年であっても年間の死亡者数が2ケタ以下となったことは1度もありません。<男性の被害者が多い傾向にあります。

<蜂被害による死者数>

年度 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992
死者数 47 73 31 46 44 35 26 45 33 31
年度 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
死者数 16 44 31 33 30 31 27 34 26 23
年度 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
死者数 24 18 26 20 19 15 13 20 16 22

グラフ

※毒蛇の死者数は1994年以降のデータ、熊被害の死者数は2006年までのデータ

これは特定の生き物が原因の死亡事故としては、非常に多い数です。熊による死亡事故は一件も起こらない年さえ存在しますし、毒蛇による死亡事故も、年間で10件を超えたのは2003年~2012年の10年間でたったの1度だけです。

都市部で蜂の被害件数そのものが増えているのに対し、死亡事故は医療設備が十分でない、あるいは医療機関への搬送が間に合わないなどの山間部・森林といった場所での事故によるケースが大半です。

特にオオスズメバチの巣は土中に埋まっていることが多く、登山客・ハイキングの観光客などが知らないうちに巣の近くに入り込んでしまい、攻撃を受けてしまう事例が毎年数多く報告されます。
またさほど森が深くないところでも、一般の登山客が使う登山道のすぐ近くに蜂が巣をつくった結果、団体の登山客が襲われ、1度に何人も刺されてしまうという事件もみられます。

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