薬が効かないゴキブリがいる!?「耐性ゴキブリ」とは
1990年代頃から「耐性ゴキブリ」と呼ばれるゴキブリの個体が見られるようになっています。「耐性ゴキブリ」とは、
- ・特定の殺虫剤(薬剤)が効きにくい
- ・毒えさを設置してもあまり食べない
という特徴をもつゴキブリのことです。文字通り、従来の駆除方法に対して「耐性」を獲得したかに見えるゴキブリです。当然、その駆除は困難なものになります。なぜこのようなゴキブリがあらわれたのか、耐性ゴキブリにはどのような対処をすればいいのかなどをまとめました。
耐性ゴキブリとは
~毒えさを食べなくなったゴキブリ。殺虫剤へ耐性を持つものも
日本では古くから、殺虫剤に「ピレスロイド」という薬品が燻煙剤・スプレー式のいずれにも広く使われてきました。
「ピレスロイド」は除虫菊由来の殺虫成分であり、本来、害虫に対して高い効果を発揮します。また、ほかの動物への毒性が非常に低く(選択毒性といいます)、非常に扱いやすい性質を持っています。
安全かつ高い効果が期待できるため、現在でもこの「ピレスロイド」系の殺虫成分は、市販の害虫駆除剤に幅広く使われています。
耐性ゴキブリは「ピレスロイド」系の薬品に非常に強い耐性を持っています。
他の薬剤についても、長期間同じものを使い続けることで、その場所のゴキブリが耐性を持つケースが確認されています。個体数はまだ少ないものの、毒えさに使われる薬剤に対して耐性を持つものも現れ始めています。
また、駆除の際に毒えさのにおい・配置がゴキブリの出やすいところへ集中し続けた結果、ゴキブリが毒えさを食べなくなる事例もみられます。
これら殺虫剤・毒えさの効かないゴキブリのことを総称して、「耐性ゴキブリ」と呼んでいます。
世代交代による淘汰で耐性ゴキブリが増加した
日本でゴキブリが駆除対象の害虫とされるようになったのは、高度経済成長期、1950年代以降のことです。
約50年で耐性ゴキブリが出現するようになりましたが、そのメカニズムは、
・自然由来の「ピレスロイド」系が殺虫剤の主流だった
↓
・自然界に存在する成分のため、元からゴキブリの中に抵抗力の強いものがいた
↓
・抵抗力の強いものが生き残り、抵抗力の弱いものが淘汰された
↓
・抵抗力の強いもの同士が交配を繰り返した結果、耐性が強化されていった
↓
・ゴキブリが毒えさの集中する場所・その特徴を覚えていった
という結果によるものです。
生物の性質が変化するのに、50年というのは非常に短い時間です。ゴキブリがこの期間で耐性を得られた理由としては、
- ・個体ごとの寿命が非常に短い(半年程度。世代交代が早い)/li>
- ・一生のうちでの産卵数が非常に多い(耐性を持つ世代が次々に生まれる)
の2点が挙げられます。
寿命が短く、1回の産卵数が最も多いチャバネゴキブリの中に耐性ゴキブリの比率が高いことも、これを裏付けています。
耐性ゴキブリへの対策1
食べなくなった毒えさを食べさせるためにできる4つの工夫
毒えさを置いているのにゴキブリが減らない場合、耐性ゴキブリといっても、家の中の毒えさを覚えてしまい、食べなくなっているだけのケースがあります。
置いた毒えさを確認してまったく減っていないようなら、ゴキブリに毒えさが効いていないのではなく、食べていません。
この場合には、4つ工夫をしてやるだけで毒えさを食べるようになります。
1、毒えさ以外の食べ物を置かない
家の中に毒えさ以外の食べ物を出しっぱなしにしていると、耐性ゴキブリがそちらに引き寄せられる場合があります。
毒えさ以外、食べ物を置かないようにしましょう。
2、毒えさのにおいを変える
毒えさをずっと同じ場所に置いているとにおいが飛んでいたり、以前に食べたゴキブリが死ぬ前に警告フェロモンを発し、仲間のゴキブリに近付かないよう伝えていることがあります。
毒えさに、
- ・ガムシロップ
- ・ドレッシング
- ・焼肉のタレ
など、甘いにおいのするもの・油分の多いもの・においの強いものをかけると、ゴキブリを引きつけることができ、再び食べに来るようになります。
3、毒えさの種類・置き場所を変える
それまで使っていた、食べなくなった毒えさと種類を変えることでも、毒えさを食べさせることが可能になる場合があります。
毒えさの置き場所を変えるだけでも、ゴキブリが記憶している毒えさの条件から外れ、それを食べるようになることもあります。
毒えさを食べなくなっているだけの耐性ゴキブリなら、毒えさを食べさせられれば、駆除できます。
耐性ゴキブリへの対策2
ホウ酸団子が効果的。子ども・ペットの誤飲に注意が必要
殺虫剤・毒えさも効かない耐性ゴキブリには、ホウ酸団子を使います。
ホウ酸は殺虫用につくられた薬剤ではなく、その量に応じてすべての生き物に対して同様の効果を見せる物質(無機物)です。
「ゴキブリに効く」のではなく、致死量を摂取すれば、どの生物にも毒として機能します。生き物の体内にある水分を奪って死なせるため、毒に耐性を持つゴキブリでも駆除することが可能です。
これは人間やペットが摂取した場合にも同様ですので、小さな子どもやペットのいる部屋には置かず、ホウ酸団子を置いた部屋にはペット・お子さんをけっして入れないように注意してください。毒えさを食べなくなっているだけの耐性ゴキブリなら、毒えさを食べさせられれば、駆除できます。
耐性ゴキブリへの対策3
駆除業者へ安全かつ確実な駆除を頼む
毒えさやホウ酸団子を設置しても、耐性ゴキブリへの対応が不十分な場合があります。これらを小まめに準備をするのも大変ですが、小さな子どもやペットのいる家庭では、毒えさやホウ酸団子の誤食が心配ですし、効果を発揮する前に片付けなくてはならないこともあるでしょう。
骨が折れる耐性ゴキブリの駆除は、業者に対応をお願いしたほうがメリットが大きい場合もあります。駆除業者はゴキブリのプロなので、耐性ゴキブリなどの研究もしています。最新の駆除方法や適したアドバイスがもらえるので、自分で対応しきれなくなったら業者に依頼してみるのも有効な手と言えるでしょう。