害虫としてのゴキブリの3つの性質「不快害虫」「衛生害虫」「経済害虫」

ゴキブリは「害虫」の代表的なものです。害虫とは文字通り人間にとって「害」になる虫(昆虫以外の節足動物なども含みます)のことですが、一口に害虫と言っても、その「害」にはさまざまなものがあります。

そこで、どのような「害」があるかによって害虫を分類することが可能です。以下はその分類例です。

害虫の分類 被害内容 代表的な害虫
不快害虫 ただ「見た目が気持ち悪い」などの理由で、いるだけで人間を不快させるものをいいます。実害ではなく心理的な害をもたらす害虫だと言えます。 クモ、ヤスデ、ゲジゲジ等
衛生害虫 衛生上の害をもたらす害虫です。菌・ウィルスなどの病原体を媒介することで感染症の原因になるなど、衛生環境を悪化させることで、害となるものです。また、ハチなど人間を直接攻撃する可能性があるものも衛生害虫に分類されます。 カ、ハエ、ダニ、ハチ等
経済害虫 品物などに害を与えることで、経済上の損失の原因になるものです。何に対して害を生じさせるかで、「農業害虫」(農作物)、「食品害虫」(食品)、「家畜害虫」(家畜)、「財産害虫」(家財など)などに細分化されます。 シロアリ、コクゾウムシ、アブラムシ等

ゴキブリはどの分類にあてはまるでしょうか。実はすべてです。たとえばクモは、見た目が不気味で嫌われがちという意味で「不快害虫」に分類されますが、衛生上・経済上の被害はあまりありません。むしろ、他の害虫を食べてしまうなど「益虫」としての性質もあります。対してゴキブリは、衛生害虫・経済害虫・不快害虫のすべての性質を兼ね備えており、その意味では、まさしく「害虫の中の害虫」と言えるのです。

それでは、ゴキブリが人間にもたらす害について、詳しく見ていきましょう。

不快害虫としての害~人間に与える圧倒的な嫌悪感

もしも、具体的な害のない昆虫だったとしても、多くの人はゴキブリを嫌い、駆除したいと考えるのではないでしょうか。私たちは、ただゴキブリを見るだけで、その姿そのものに強い嫌悪感を抱いてしまいます。

ゴキブリが嫌いな人の中にはほとんど「ゴキブリ恐怖症」と呼べるレベルで嫌いだという人も珍しくありません。ゴキブリが自分に向かって飛んできた、触れてしまったなど、ゴキブリとの遭遇体験がトラウマのようになっているという話もよく聞かれます。

ゴキブリの存在は飲食店にとっては致命的なダメージになります。ゴキブリが来店者の目にふれてしまうと、クレームのみならず、保健所の立ち入り検査や営業停止の処分にまで発展するリスクがあります。そして「ゴキブリがいる店」という評判によって店のイメージが著しく損なわれます。製薬会社の行ったあるアンケート調査では、9割の人が「ゴキブリを見た飲食店には二度と行かない」と回答しています

これは店の経営にも差し支えますので、経済的な害の一種ととらえることもできますが、その背景には人がゴキブリへ抱く強い不快感があります。

なぜこれほど嫌われているのか、「嫌いなポイント」は人によって異なり、明確な答はありませんが、やはりゴキブリは「不快害虫」としての存在感が圧倒的だと言えます。

衛生害虫としての害~菌やウィルスをバラまく

ゴキブリに媒介される疾病

ゴキブリは外から侵入してきますが、その侵入経路は、下水、排水口、トイレといった不衛生な場所も多いです。家の中では人目につかず、普段は掃除がされることもないキッチンの家具の裏側などを巣にして潜んでいます。当然、その体にはさまざまな雑菌・雑菌を持つ微生物が大量に付着し、繁殖しています。

ゴキブリから検出される菌・ウイルスには、毒性の強い危険なものも多いです。以下はその一例です。

<ゴキブリから検出される病原体と引き起こされる病気>
病原体 引き起こされる疾病
サルモネラ菌 食中毒
赤痢菌 赤痢
チフス菌 腸チフス・パラチフス
大腸菌 尿路感染症急性胃腸炎
小児麻痺病原体 小児麻痺

ゴキブリ自身は全身を油膜で包まれており、こうした雑菌の影響を受けることがない一方、全身に雑菌をまとったまま、私たちの住居内を動き回っているのです。そのため放置されている食べ物や調理器具、家具などにゴキブリが触れたことで、病原体が人へと感染する危険性があります。

ゴキブリ自身だけでなく、ゴキブリのフンや死骸なども雑菌の巣窟です。ゴキブリがいる限り、どんなに清潔にしていても、かれらによって家の中に雑菌をバラまかれてしまうということになります。

ゴキブリアレルギーと噛まれることによる被害

ゴキブリそのものがアレルギーの原因にもなることもあります。

乾燥して細かく砕けたゴキブリの死骸・フンが空気中に舞い上がり、呼吸時に吸い込まれ、ぜんそくを伴うアレルギー症状を引き起こします。衛生環境の悪い国・地域に多く、海外、特にアメリカの貧困地域ではアレルギーぜんそくの原因の約半数がゴキブリである、とする調査結果もあります。

日本のぜんそく原因はハウスダスト(ダニ)が原因のものが大半ですが、ぜんそくを患う子どもの内、全体の20%程度がゴキブリへのアレルギーを持っていることも判明しています。ゴキブリがいる住まいに暮らし続けていると、いつかゴキブリアレルギーを発症してしまう可能性があると言えます。

また、まれですが、ゴキブリ自身が直接、人間を攻撃することもあります。

通常、人間と遭遇したゴキブリは逃げ出し、積極的に襲いかかってくることはありません。しかし就寝中など知らないうちにゴキブリに身体を這われていて、驚いた人間が払おうとしたところ噛まれた、というケースもあるのです。

雑食性のゴキブリは発達した顎を持っています。小さいので、噛まれた傷自体はさほどひどくはなりませんが、前述したようにさまざまな雑菌を持っているゴキブリですから、そうしたものに傷口から感染症してしまう可能性は十分にあるでしょう。

経済害虫としての害~食品などをかじり、漏電火災の原因にもなる

ゴキブリがもたらす経済的な被害は、まず、食害が挙げられます。

ゴキブリは雑食性でさまざまなものを食べてしまいます。食べ物はもちろんのこと、洗面所の石鹸を齧ったり、紙類を食べてしまうこともあります。大事な本を齧られたり、フンで汚されたりしてはたまりません。

食べ物については、少しでも食べられてしまうと、残りを食べる気も起きませんから(実際、衛生上の問題があるので食べるべきではありません)、まるごと廃棄することになり、損失となります。

ゴキブリは狭い隙間を出入りすることができるため、どんなところにでも入り込みます。それが思わぬ被害を招くことがあります。それは家電製品の漏電被害です。通電している家電製品は熱をもっているので、ゴキブリが暖をとりにやってくることがあり、隙間から内部に入り込むケースもあります。

そして内部で剥き出しの基盤に触れて電気系統に異常を起こしてしまう可能性があるのです。そのゴキブリ自身も死んでしまいますが、漏電は火災の原因になるため非常に危険です。以下のようなものは、内部に空洞があって入りやすい、食べ物が付着していることが多いなどの理由から、特にゴキブリの侵入に気をつけたい家電製品です。

  • <入り込む可能性のある電化製品>
  • ・冷蔵庫
  • ・炊飯器
  • ・電気ポット
  • ・電子レンジ
  • ・テレビ
  • ・パソコンのキーボード内 等

家電製品のほか、配電盤やコンセントに入り込むこともあります。

事実、大量のチャバネゴキブリがコンセントの中に入り込んだ結果、20平方メートル四方の飲食店が燃焼した火事の事例も報告されています。東京消防庁の調査によると、そうした生物が原因となった火災は、ねずみやペットによるものなども含めて、東京だけで年間20件程度あります。ゴキブリが原因であるものはその中の数件というところでしょうが、件数がわずかであってもゴキブリが原因で起こる火災があることは間違いありません

これらを踏まえて、飲食店は駆除業者と契約して、定期的に駆除をしてもらっている所も多いです。飲食店などは、やはり業者対応が一番確実で安心できる方法と言えるでしょう。

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